里帰り③

一番高い山の山頂に降りると、案の定犯人がそこに居た。


「久方振りだなメア」


「誰かと思えば、女関係で死んだ莫迦ドラゴンか。今は邪魔するな」


「何じゃとババア」


「私がババアならお前はクソジジィだろ、取り敢えず邪魔するな」


「久し振りだねトール、また会えて嬉しいよ」


そう話し掛けてきたヒュプノスは、笑顔で手を振ってきていた。

手を振り返して隣まで歩いていくと、両手を広げられる。


仕方なくハグをして挨拶すると、満足そうに離れる。


「相変わらず温厚な性格じゃな、そのお主が争いとは何があった。どうせメアが悪いんじゃろ」


「そうなのかな、僕は唯悪夢を見させるのは良くないよって注意しただけなんだけど」


「そうじゃな、確かに悪夢は良くないな。じゃがな、悪夢を見せるのがあやつの仕事じゃ。でなければ無職になってしまう」


「それは大変だけど、駄目なものは駄目だよね」


「そうじゃな、なら一発ぶち込んでおくか」


「ありがとうトールさん!」


ヒュプノスの笑顔に背を向けてメアの方を向くと、持っていた鎌で地面に絵を描いていた。

こちらが静かになったのに気付いたのか、慌てて武器を構え直す。


「という訳だ、ちくっとタコ殴る」


「ヒュプノス良い子過ぎるわ! 何かこれからやるのに、なんか……なんか、やりにくいわ!」


「あやつ特に思い浮かんでもないのに反論しよったぞ」


もう一度ヒュプノスの方に振り返って言うと、何かに気付いたように前に出る。


「話をする時は考えが纏まってからの方が良いって、お父さんが言ってました」


「トールー……人を馬鹿にするのも程々にしとけ馬鹿!」


勢い良く飛び出したメアの鎌を避けて、足払いをして転ばせる。

尻もちをついたメアの鎌を取り上げて、龍力を腕に込めて思い切り空に投げつける。


「あぁー! 私の武器がー!」


「姦しいぞババア」


「何すんのクソジジィ、ミョルニルちゃん頂戴!」


「誰がおぬしなんかにやるか、私が持つに相応しい武器であろう」


「頂戴よー、頂戴頂戴頂戴……」


「姦しいと言っておるだろう、かと言ってパラシュもやらぬぞ」


人型になって出て来た二人は飛ばしたと見せかけた鎌を持ち、メアの前に突き刺す。


「どっちも可愛い! 欲しい欲しいトールー!」


「ふーん。それじゃあ私とパラシュ、どっちがトールに相応しいか。今ここで決着つけても良いのよ?」


「それは僕も同じ事を考えてたな、君を叩き潰して僕がトールの寵愛を受ける」


「私は私は?」


それを聞いて二人に駆け寄ったメアが目を輝かせ、交互に顔を見て返事を待つ。


「お前は無い」


「君はちょっと……」


「私はミョルニルを寵愛した事など無いぞ、ひいきはせんからな」


互いに己を顕現させて睨み合っていたが、私の方を向いて自らを投じる。

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