彼氏の性格を治してー前編②
晴香「急に会いたいって
どうしたの?健二が家に
上げてくれるのも珍しいけど……
あ、そうそうケーキ作ったよ。
勝利記念!ついに甲子園だねっ」
健二「あぁ、ありがとう。
今日はさ、親帰らないんだ」
ドキリとした。
いつもより低く聞こえた
健二の声に自覚する。
今、私は男の人と2人きりでいる。
肩を掴まれながら思う。
私は健二が好き。
でも、そんな心の準備は
出来ていなかった。
騙された様な状況もあって
私は健二を拒んだ。
あるいは拒んでしまったから
だろうか。健二は頑なになり、
私の服も、ケーキも、
今までの思い出までもが全部、
全部汚れてしまった。
【汚れてしまった】
それ以来、
私と健二は話をしていない。
【汚れてしまったんだ】
あの声は私の知ってる
健二ではなかった。
あの顔は私の好きな
健二じゃない。
汚れてしまったものは……
【綺麗】にしなくてはいけない。
多少の危険なんて、
今の私には関係ない。
この汚れた思い出を消せるなら
何にでもすがりたい。
その時、すでに私の心も汚れた闇の中にいたのだろう。
闇と呼ばれるあの道も、
今は不思議と恐くない。
足元見えない暗い細道を抜ける。
私は今、探せば殺し屋さえ横行するかもしれない闇にいる。
時折鼻を突く腐臭はまさか
人では無いだろうが……
1・2匹の犬猫の死骸が
醸す臭いでは無い。
とはいえ、
私は健二を殺すつもりは無い。
目的はすでに決まっている。
私は健二を【治す】つもり
なのだ。"それ"が出来るという
病院の噂は聞いたことがある。
この闇でも比較的有名な話だ。
風が吹き抜けた。
途端に道が開けて光が差した。
暗かった路地裏を抜けてきた
事が嘘の様な空間が広がる。
木漏れ日に佇む小さな一軒家と、小さな【白医院】の表札。
光の指すその空間だけはなぜか妙な小綺麗さがあって、
あぁ病院なんだなと
納得してしまう。
白「いらっしゃい……なんだ。迷子か?」
病院に入るとそこは
待合所ではなく、すでに
診察室の様な空間で、私に話しかけた白衣の男性が医師なのだと
自然に納得させられた。
晴香「バカにしないでください……」
医師が私の制服姿を見て
小馬鹿にする様に言ったのが
無性に腹立たしく、
鞄に入れていた100万の
札束を机に投げて見せた。
裕福な家である事が手伝ったとはいえ今までずっと貯めてきたお金を使う事には後ろめたさが
あったけど、それ以上の
不幸が私を後押しをしていた。
白「……分かった。客に対する非礼は詫びる。で、ここに何を"治し"に来た?」
私はこれまでの経緯を話し、
言った。
晴香「彼の性格を"治して"」
医師は小さく口元を歪めながら
金を懐にしまった。
医師は私に術の要望を紙に
書かせた。
【素直、優しい、料理上手、頭がいい、私を大切にしてくれる】
白「随分と欲張ったな」
晴香「出来ないの?」
白「まさか」
医師は大袈裟に手を広げ
小馬鹿にした様に笑った。
そして、病院を出ると
ドアノブにcloseの札を立てた。
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