ダンジョンと再会と2

「お二人は、お知り合いだったんですね?」


 僕とジュドの会話に、ユアン先生が目を丸くして驚いている。どうやら、前に言っていた五十階まで到達したパーティというのは、ジュドのパーティだったようだ。

 彼は、オービニュ領冒険者ギルドで出会った冒険者で、陽気な力自慢の大剣使いである。ちょっと前にも、無頼者に絡まれていた僕らを助けてくれたりもした。

 その時に、このダンジョンに向かうと言っていたが、こんなに早く再会できるとは思わなかった。


「ユアン先生に聞いたパーティが、まさかジュドさん達のことだったなんて驚きました」

「ぼっちゃんたちがいつ来るか、こっちはずっと待ってたんだぜ。それで? この先生に聞いたが、俺たちに頼みたいことがあるって?」

「ち、ちょっと、ジュドさん。こんなところで、ぼっちゃんぼっちゃん連呼しないでよ……みんな見てるから!」

「ほう、なるほどな。ぼっちゃんも年頃なんだな、了解了解」


 そう言ったジュドは、ニーナとカエデの方へ視線を送り、白い歯をのぞかせて豪快に笑った。声がデカいんだってば、お願いやめて。

 ニーナは会ったことがあるが、カエデとダリルは状況がつかめず、さっきからポカンとしていた。

 ジュドのチームと、僕達のチームは、その場で簡単な自己紹介をした。ジュドたちは、基本的にマッチョチームであったが、このダンジョンの特性上、魔法特化パーティと臨時で組んでいるらしい。こちらは女性ばかりのチームだが、どちらも偏った特化型パーティということでよく手を組むとのことで、そこそこ信頼できる相手のようだ。


「では、申し訳ありません。ここからは、リーダーのジュドさんのみということで……」


 ユアン先生の案内で、冒険者ギルドがダンジョンを管理するための詰め所にしているテントの一つに、ジュド一人を誘った。こちらのパーティもニーナと僕が、テントに入った。

 簡易テーブルに折りたたみ椅子といった粗末な内装だったが、魔法の結界が張ってあるらしく、内部の音は外に漏れないようになっていた。


「すみません、パーティの皆様がお気を悪くしてないといいんだけど。どうしても内密な話がいくつかありますし、ジュドさんにも、すべてをお話しする訳にはいかないと思うから」


 全員が着席したところで、まず僕がそう断りを入れた。ジュドは少し驚いた顔をして、すぐに顔の前で大きな手のひらをぶんぶん振って、大きな口で笑う。


「貴族相手の依頼じゃ、そういうことも結構あるから驚かねぇけどな。それに俺たちは冒険者だ、嫌なら嫌と遠慮なく言うさ」


 親指で外を指差し「あいつらも、その辺のところはわかってる」と言って、頷いた。


「それで? 確か、ダンジョンの五十階まで行きたいってことと、ヘルサラマンダーについての情報ってことだったな。まずは五十階までの案内とか、護衛って感じか?」

「……いえ、行くのは僕達だけで大丈夫。ジュドさんには、その手筈を整えて欲しいんだ」


 僕の台詞に、ジュドさんだけでなくニーナやユアン先生も驚きを隠せなかったようだ。というか、頭の上に「???」が並んでいる。


「どういうことだ? ああ、まさか、地図か? ……いや、まだ地図はないぞ。ギルド側からの依頼もあったんで、近いうちに地図が描ける奴を雇って進めようとは思っていたが」

「あ、違うんだ。ジュドさんには、五十階に一度だけ行ってもらいたいんだ」

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