控室
※※※
豪華な客室で、用意されたお茶を貰って僕達がすっかり寛いでいると、やがて慌ただしくニーナがやって来た。
「ずっと放っておいてごめんね。でも私、まだこれから準備があるのよ。会場の準備が出来たら、誰か呼びに来ると思うから、それまでここでゆっくりしててね」
部屋にいたメイドが、ニーナの分のお茶を準備しようとするのを押しとどめて、あたふたと用件だけ言って、座りもせずに出て行ってしまった。
「なんか、忙しそうだな。俺たち、こんなのんびりしてていいのか」
「女の子は準備も大変なんだよ。しかも、ニーナは今日の主役だし。それに僕達は招待客なんだから、余計なことはしない方がいいんだよ」
僕達にしたところでまだ着替えてないが、準備はパーティの寸前の方がいいだろう。お茶やお菓子で高価な衣装を汚しでもしたら大変だからだ。それに髪を整えたり、服を準備してくれる使用人まで用意してくれているのだから、至れり尽くせりである。
「それもそうか。なあ、これってチョビにあげても大丈夫?」
「いいよ、結構なんでも食べるから」
出されたお菓子を片っ端から味見しているエドガーのところで、どうやらチョビが物欲しそうに待機していたらしい。一方ペシュの方は、テーブルに果物があるものの、部屋にはメイドが入れ替わりやって来るし、そのまま部屋に控えていたりするからか、僕の服の中に隠れたままである。
「……ペシュはあんまり他人に懐かないな」
「そうだね、偵察に出してる以外は、だいたい襟元に隠れたまま出てこないからね」
実際、学園でも僕の従魔はチョビだけだと思っている人もいる。もともと授業も召喚魔をとっていないので、わざわざ吹聴して回る必要もないし。
「そういえば、エドガーはパートナーを連れてこなかったの?」
「はあ? そういのは、いいよ。ニーナは誰か連れて来いって言ってたけどな」
確かに学園で探すとなると後が面倒だし、わざわざモンフォールから連れてくるほどでもない。本当は、アリスやカエデなら話は簡単だったんだろうけど、今日のパーティはほぼニーナの親族など、上位貴族が中心なのでさすがに彼女たちは遠慮したのだ。
「それより、お前だよ。例のあのバートンとやらには気を付けろよ。間違いなく絡んで来るだろうし、まちがっても学園で会ったリュシアンだと気付かれるなよ」
面倒くさいから、と顔をしかめて付け足したエドガーに、僕は思わず苦笑する。ニーナの様子から、あのバートンには何か、それこそ面倒くさい何かがあるのではないかという予感がひしひしと感じられてならない。
そうこうしている間に、そろそろ時間になったようだ。
フットマンと思しき青年が、僕達を呼びに部屋へとやって来たのである。
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