迷走中3
改めて彼らを確認すると、先日2階層の空白地帯で知り合ったパーティではなかった。どうやら、3階層まで一気に行くと言って空白地帯を素通りしたチームらしい。
「助かったよ…地図は役に立たないし、道に迷った挙句、どこもかしもモンスターの巣窟で、なんとか交代で休憩を取りつつ、少しずつ探索と移動をしてやり過ごしていたんだ」
見るからにへとへと、というように地べたに座り込んだのは、先頭を走っていた少年である。おそらく人一倍気を張っていたのだろう、このパーティのリーダーかもしれない。
リュシアンがカバンから水筒を出して渡すと、彼は一気にあおって飲んだ。口元を袖で拭いながら、なにコレ美味しいと思わず声を上げている。
飲み水は全てエドガーが生成したいわゆる魔水だから、普通の水よりはかなり美味しいし、それ自体に少し体力回復の効果もある。ということで、メンバー全員に回して飲んでもらった。
「あのモンスタールームを抜けたということは…、ワープ陣は見つけられたんですか?」
一息ついたメンバーのうち、一番最年少に見える少年がおずおずとリュシアンの顔をみた。どうやら一番年下のリュシアンが話しやすいと判断したようだ。
見る人によってはエドガーはなんか大きくてコワいし、カミラはめっちゃデキるお姉さんという感じで近寄り難い印象があるのかもしれない。
ともかく、彼らは戻ろうにも2階層への階段がわからなくなり、さりとてワープも見つけられず、あのモンスタールームも越えられず、ひたすらこの階層をぐるぐると回っていたらしい。
昨日のお昼くらいからというから、それはもう丸一日である。彼らのひどく煤ぼけた様子にも納得だった。
「残念ながらここは3階層じゃないので、ワープ陣はないと思います」
「え…、どういう?」
答えたのはリーダー風の少年だ。聞いた本人は、まさに絶望の台詞を聞いたように絶句している。意味は分からなくても、まだ地獄の探索が続くという結論だけは理解したようだ。
リュシアンは先ほど行きついた結論を簡単に説明した。
リーダーだと目星をつけた少年は、やはりこのパーティのリーダーだったらしく、気丈にも責任者として現状を把握しようと必死である。あまりにしゃちほこばったその様子に、それこそ息を抜いたら倒れてしまわないかと心配になった。
リュシアンは努めて軽い口調で話しながら、仲間との合流地点まで彼らを案内することにした。
「とりあえず仲間が下り階段付近にいますので合流しましょう」
「えっ…、下へ降りるのですか?」
「上に戻っても、そこが2階層だとは限りません。今まさに成長している可能性があります」
そう、どちらに行こうが成長途中の階層が割り込んだリスクはある。それなら下る方が、すぐにワープ陣にたどり着ける可能性があるのだ。仮に登って2階層だったとしても、更に登った階が成長していれば、またそこを超えて1階層を目指さなくてはならない。2階層分を超えるリスクの方が高いと考えたのだ。
その後、無事に合流地点で仲間たちと落ち合って、2パーティを加えたリュシアンたちの混合チームは、慎重に下の階層へと降りて行ったのである。
悪いことは重なるもので、残念ながらそこは3階層ではなかった。
もちろん皆の落胆は計り知れなかったが、ペシュと小鼠のファインプレイでそれから数分後、少し狭かったが空白地帯を見つけたのである。
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