学園へ
全力で否定されるだろうけれど、突き詰めればリュシアンから実母と兄を奪った原因は、自分の存在があったと考えている。母の妄執も、貴族たちの利権も、すべてはエドガーの継承権ありきなのだから。
もちろんそれは原因であって、エドガーのせいではないけれど。
「今すぐには結論を出せぬ」
それが父親である王の言葉だった。
この件については、もともとリュシアンによって口を酸っぱくして釘をさされていたので、早々に結論を出してしまうということはないだろう。
とはいえ、エドガーの意思はもう固まっていた。
もとより王位を継ぐのは兄であり、自分は兄を支える騎士になろうと幼いころから決めていた。あいにく武術の才能がないらしく、実際には夢に見たような騎士にはなれないかもしれないが、それでもこれからリュシアン達と学校で培っていくものは十分に兄の手助けができる力をつけてくれると信じている。
できたらリュシアンにも、王族として一緒に兄を支える一員になってくれたらと思うが、実のところそこは最重要事項ではない。
あの優秀な弟は、たとえどんな形であれ誰よりも頼りになることは間違いがない。そんなことよりも、リュシアンがいついかなるときも「味方」でいてくれると、そう掛け値なしに信じられることが重要なのだ。
もはや王都に用はないとばかりに、母に会っていけという父の言葉にきっぱり首を振り、エドガーは早々に旅の準備を整えて翌日の昼過ぎには王宮を後にした。
当初の予定では、王都で数日間過ごす予定だったので、学園までは陸の道を行く予定だった。けれど思いのほか時間に余裕が出来てしまったので、せっかくなのでリュシアンの家を回って一緒に学園に帰ろうと考えた。
エドガーは、再び来た道を引き返す形でオービニュ領に馬車を向けた。
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