いざ入学!
まだ夏の名残が残る暑さの中、リュシアンはドリスタンへと旅立った。
今生の別れかというほど大げさな家族に見送られ、学園都市の中心である学校のある街へと馬車を進めた。
国境の町を越えると、ついにドリスタンだ。
学園都市と観光、あとは鉱石の採掘に、広大な農地による穀物栽培、ドリスタン王国はモンフォールよりはるかに豊かな国であった。
我が国モンフォールはどちらかというと、王族や貴族が強大な魔力を持ち国力を維持しているところがある。要するに戦争に勝って土地を広げてきた国なのだ。さすがに今は、農業や貿易などの産業で発展しているけれど。
(ウチって結構デンジャラスな国だったんだね。よかった、平和な時代で……)
学生は地元や下宿による通いの者や、リュシアンのように寮に入る者など様々だ。送ってくれた家の者と別れると、リュシアンはすぐに案内に従って学園の門をくぐった。荷物はすでに寮の方へ送られているが、学生はとりあえず入学オリエンテーションを受けることになる。
そのあとクラス分けが発表され、入学式となるのだ。オリエンテーションを終えて廊下に出ると、すでにクラス分けの紙が張り出されていた。
もちろん教養科の方のクラス分けだ。必須のⅥクラスまでは階級ごとに2~3クラスづつある。ちなみに教養科には、Ⅶから先はない。よって、クラスという概念があるのは教養科Ⅵまでである。
リュシアンは、教養科Ⅱ-1クラスだった。
張り紙の指示通りに教室へ行へ向かう。さすがに同い年くらいの子はあまりいないようだ。基本的には七才からだし、その年から入る生徒はだいたいⅠからのスタートになるのが普通だった。おまけに認め無くはなかったが、リュシアンは六才にしてもかなり小さい方といえた。ある程度目立つのは仕方ないことだった。
ドリスタンも王政なので身分制度はあるが、基本的に学園内では身分は関係ない。学生は、学生という身分だという考え方である。実際ここに来るまでに身分を問われたこともないし、差別をされている学生を見かけたりはしなかった。
さすがに長年にわたって学園都市として発展してきただけのことはあり、こうして見る限りきちんと機能しているように思える。
さすがは、名にし負う学園都市だ。
――と、思っていたのだが……。
(まあ、現実なんてものは建前通りにはいかないよね)
まんまるな顔に、蝶ネクタイ、坂道の上に立たせたら勢いよく転がっていきそうな、ハンプティ・ダンプティのような姿の男の子が、腰(?)に手を当てて目の前に立ちふさがっていた。
「お前、今なんて言った?」
(なんでいきなり喧嘩ごしなの、この子)
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