第二章 その男、態度でかい_1






 そんなこんなで、花酔楼でのたいぐうもよくなってきたある日のこと。

 夜、私は庭にかくれていた。季節は夏。あせだくだしも寄ってくる。

 なぜそんなことをしているのかというと、それは絵本を読むためだった。

 数日前、余暉がめずらしい物が手に入ったと言って、子供用の絵本を持ってきてくれたのだ。

 絵本といっても絵と文字が書かれた紙をひもじただけの、簡単な物だった。それでも私はとても嬉しかった。

(これで文字が覚えられる!)

 単語を覚えるのに、これほど便利なものがあるだろうか。

 この世界の識字率はそれほど高くない。それでも、かん相手の商売である花酔楼では、大半の妓女が読み書きをすることができた。だから、文字が分かれば便利なことは色々とある。

 余暉のお得意様である妓女が、お客さんからもらったものを捨てようとしていたのでもらい受けたのだそうだ。

 私は心から余暉にお礼を言った。

 返事の代わりに、彼は優しく私の頭をぽんぽんと叩いた。

 それはめてくれる時の余暉のくせだ。

 そうしてでられると、私もほっと安心する。

 ところが、さつそく絵本で文字を勉強しようとしたら、ある問題にぶち当たった。

 それは明かりだ。

 昼間はじよたちへのマッサージや酒糟パック作りで、休むひまもなくいそがしい。そして夜になって妓女たちがはらってしまうと、今度は夜やみで文字が読めないのだ。

 明かりをともす油は貴重らしく、いくら待遇が良くなったとはいえ分けあたえてもらえるはずもなかった。

 そこで私は仕方なく、お客さんを接待している妓女の部屋かられる明かりで、絵本を読むことにした。

 もちろん如何いかがわしいこうおよびそうな時は、さっと別の部屋の前に移動する。

 これじゃあのぞき見でもしてるみたいだと、自分で自分が情けなくなった。

 それでも、うすかりの中で必死に絵本の文字を追う。

(やっぱりここの文字は、漢字によく似てる)

 ひらがながないので文章は読めないし、日本では見たことがないような文字も少なくない。しかし中国語だと言われれば、そうかもと思う程度には漢字に似ているのだ。

 かつて世界史の教師が、中国語は英語と同じで主語の後に動詞が来ると言っていた。それを応用して読めば、初めて見る絵本でもいくらかは理解できる。文字も画数の少ない簡単な字が多く、私はその紙面を追うのが楽しくてしょうがなかった。

 その男と出会ったのは、いつものように闇にまぎれて絵本を読んでいた時のことだった。

「そこで何をしている!」

 必死に文字を追っているところに声をけられ、私は草むらの中で思わず縮こまる。

 声を掛けてきたのは、薄明かりでも分かるしゆうれいな立ち姿の青年だった。

 いつの間にそこまで来ていたのか、彼は私のいるしげみのすぐ近くに立っている。

「ご、ごめんなさい!」

 覗きをとがめられたのだと思い、必死で頭を下げた。

 いくら中を覗き見していないと言ったところで、この状況では信じてもらえるとは思えなかったからだ。

「外であやしい気配がすると思って来てみれば……だれの差し金だ?」

 するどまなしでたずねられ、こんわくする。

(どういうこと……? 覗きだと思って怒ってるわけじゃないの?)

「お、おれは、こここ、ここの下働き!」

 口が回らず、にわとりのようになった。

「そんな出まかせが通ると思うか」


 しかし相手はなつとくしない。

 目線で人が殺せるなら、私はいまごろ生きてはいられなかっただろう。男にはそう思わせるようなはくがあった。

 泣きたくなって、私は見ていた絵本を男に差し出した。

ちがう! これ、よんでた、だけ!」

 もっとりゆうちように言葉をしやべれたのなら、いくらでも言い訳ができたはずだ。しかしきんちようおそれで、私はそれ以上どうすることもできなかった。

 青年が腰に付けたはいぎよくは、科挙に合格したしようしんしようめいの官吏のあかし。彼の指一本で、私の首など簡単に飛ぶに違いない。

 とりあえず前にのめり込む勢いで頭を下げていたら、差し出していた絵本をうばわれた。

 うつむいたまま歯を食いしばり、相手の反応を待つ。

「……お前、異国の生まれか?」

 私のつたない言葉から、そう推測したのだろう。青年の言葉が、少しだけやわらかくなった。

「わ、分からない。気づいたらここ、いた……」

 異国といえばそうなのだろう。しかしこの榮国をけてどこまで行っても、私が暮らした日本に辿たどり着くとは思えなかった。

(そんな説明したって、分かってもらえるはずないし……)

 なんでこんな目にという、今まで何度考えたか分からない気持ちがき上がってきた。

 本当だったら今頃、忙しいながらもじゆうじつした毎日を送っていたはずなのだ。

「頭をあげろ」

 命令に従い恐る恐る顔を上げると、男の顔がおどろくほど近くにあった。

 じろぎもできず、自分よりはるかに長身の男を見上げる。

 仕立てのいいなつふくは、官吏であることを示す盤領まるえり。しかしぎよう悪く首元のボタンを外し、ジャケットのように大きく翻領ひるがえしている。腰に巻いたかわのベルトからはかしりのぎよくを垂らし、せいな金の帯金具バツクルはさり気ないが高価な品だと一目で分かる。官吏を表す黒の烏紗帽ずきんかぶらず、長いかみはまるでたてがみのようにすべて後ろに流れていた。

 今まで見た官吏の中でも、一番だらしない格好だ。

 それなのに、不思議と彼の周囲にはピンと張ったきんちようかんただよっていた。

 余暉とは真逆の、あらあらしい美しさが彼にはあった。何もかもを見通すような鋭い眼差しと、固く引き結ばれた少し厚いくちびる

「まだ子供か」

 その言葉が独り言なのか問いかけなのか判断がつかず、とにかく私はだまったままでいた。余計なことを言って、彼のさらなるいかりを買いたくはなかった。

「文字を勉強しているのか? なぜだ?」

 思ってもいなかったことを聞かれ、困惑する。

 少なくとも、日本人である私にとってそれは当然の考えだった。だから恐る恐る口を開く。

「文字……わかれば、知る……できる。この国のこと」

 非力な私にとって、知識は身を守る武器だ。実際、現実世界で覚えたマッサージやしよう水の作り方が、今の私を助けた。

(生意気だって、またおこられるかな?)

 恐る恐る男の顔色をうかがうと、驚くようなことが起こった。

 さきほどまであれほど厳しい顔をしていた男が、ふっとかすかに口元をゆるめたのだ。

(え? なんで?)

 そう思いつつ、尋ねることはできなかった。

「そうか、いい心がけだな」

 そう言って男は絵本を返すと、そのまま妓女の部屋へと去って行ってしまった。

 残された私はまるできつねにつままれたような気持ちで、そんな彼の背中を見送った。






 それ以来、その青年官吏とはひんぱんに顔を合わせるようになった。

 夜、私が中庭で絵本を読んでいると、たびたび彼がやってくるのだ。

 正直じよほうっておいてだいじようなのかと思うが、今の所それで問題が起きたりしている様子はないので、大丈夫なのだろう。

「これも読め」

 そう言って男が差し出してきたのは、私が読んでいた絵本など目じゃない程、きちんとした本だった。

 絵がなく、文字の少ない文章が並んでいる。どうやら詩集のようだ。

 なので単語一つ一つにまり、困惑してしまった。

「これ、あ……あ? なんて読む? 難しい」

 どういうつもりだろうかと男の顔を見上げれば、そこには今までと印象の違う、やさしいみがかんでいた。

「どれだ? どの文字が読めない?」

 男が覗き込んでくるので、私はなおに引っかかった文字を指差した。

 すると男は、文字どころか詩の内容やその時代背景まで、ていねいに解説しはじめる。

(どうしてこんなに良くしてくれるんだろう?)

 そう思いつつも、私はいつの間にか男の話に引き込まれていった。

「これは俺の好きな詩だ。だから本の最初にくるよう作らせた。残りは簡単な詩ばかりだから、お前一人でもなんとか読めるだろ。分からないことがあったら、次来た時に聞くといい」

 そう言って、男はじようげんで帰っていった。

 一人残されて、親指の腹でそっと紙面をでる。

 それは現代の日本の物とは違う、厚くてざらざらする紙だった。

(でも確か、本って貴重な物なんだよね? こんなに軽々しくもらってよかったのかな? てゆうか今、『作らせた』って言わなかった? そんなにえらいのあの人? そして私はこれをもらっちゃって本当によかったの!?)

 返そうと思いあわてて男の背中をさがしたが、すでに彼は建物の中に入った後だった。

 おのれかつさを反省しつつ、私は文字の勉強を再開した。






 その日、私は芙蓉のたくを手伝っていた。

 マッサージが気に入られたのか、私は芙蓉に呼び出されて彼女の部屋にいることが多い。

 妓女のじゆくんむなもとが大きく開いている。だから私は芙蓉が胸元まで白粉おしろいを付けるのを手伝ったり、どんな化粧がお客さんに好まれるのか教わったりしている。

 花酔楼トップの彼女が使うだけあって、その化粧用具や化粧品は全て質のいいものだった。

 化粧筆とおそろいのうるしでん細工の化粧台や、くもりなくみがき抜かれた小さくはない鏡。化粧品の引き出しに収められたかんざしようは、それ一つで家いつけんが建ちそうなほどみつごうしやしろものだった。

「アンタが女だったら、これの価値も分かるだろうけどねぇ」

 昼間の光の中で、芙蓉がしどけなく言う。

 化粧をほどこした芙蓉は、まるでてんによのようだった。女の私ですら、思わずれてしまう。

 白粉に、高価な紅花のえんいろ。その赤い唇がつやっぽくいろどりをえている。

 彼女の言葉に、女だとさとられるわけにはいかない私は大人しく黙りこんでいた。

ねえさん、化粧い……なんで? しなくてもれい

 私は前から、不思議に思っていたことをたずねてみた。

 芙蓉はがおも美しいのだから、それを生かすうすしようの方がいいのにと常々思っていたのだ。

「ははッ! アンタもわかってきたじゃないか」

 しかし、芙蓉はごうかいに笑って言った。

「あのね、夜ってのは暗くて女の顔なんて見えたもんじゃないだろ? だから妓女は化粧の濃さをきそうのさ。どうせしんだいにはいっちまえば、お客は女の顔なんて見てないしね」

 思いもよらない答えに、私は驚いてしまう。

 お客さんが芙蓉の顔を見ていないはずがない。いつだっておくり物として、高価な紅やはだかがやかせるうんが届けられるのだから。

いさぎよいというかなんというか……こういうところも、芙蓉のりよくなのかな)

 その美しい見た目に反して、芙蓉はさっぱりとした男前な性格だ。

 しかしそんな彼女が、私は好きだった。花酔楼の中でも、芙蓉をしたう者は少なくない。

 そんな気持ちが顔に出ていたのだろう。芙蓉が少し意地悪な顔をして私をからかってきた。

「ふふ。アンタはそうやって、笑ってた方がいいよ。かわいい顔してるんだからサ」

 絶世の美女にそう言われると、お世辞と分かっていても照れてしまう。

「してない……俺、地味」

 姉と比べて何度も地味だと言われてきたし、自分でもその事実は受け入れ済みだ。

 地味でいいのだ。地味でも、ほかの女の子を綺麗にすることはできる。

「ったく、もっと自信を持ちな! そんなんじゃいつまでたってもよめさんなんてもらえないよ」

(だって、本当にお嫁さんもらうわけにもいかないし……)

 どう答えようかと迷っていると、不意に芙蓉が黙り込んだ。

「姐さん? どこか痛い?」

 彼女ははかなげに首をる。

「いいや。アンタみたいな弟がいたら、楽しかっただろうなって思ってね」

「姐さん……」

 芙蓉は、時折こんな風に悲しげな顔をする。

 その理由を、聞いたりなんてできないけれど。

「ああ、ごめんね。とつぜんこんなこと言われたって、困っちまうよね」

「ううん。俺、うれしいよ?」

 突然、芙蓉はかかえ込むように、私の頭をきしめた。

 豊満な胸を押し付けられ、おどろいてしまう。

けいけい……」

「うん?」

「佳佳ってのがね、アタシの本当の名前なんだ。もうだれも呼びやしないがね」

「佳佳?」

「アンタだけでも、たまに呼んでくれるかい? アタシの母さんが、付けてくれた名前なんだよ」

 芙蓉の声は、今にも消えそうなほどか細いものだった。

「うん……」

「小鈴。アンタは本当にいい子だ。いい嫁さんもらって、幸せになりな。そうして子供が生まれたら、絶対に手放しちゃいけないよ。分かるだろ? 花酔楼だけじゃない、この街には親に売られたむすめが集まってるんだ。そんな娘、少ない方がいいに決まってるじゃないサ」

 それは初めて聞く、芙蓉の弱音だった。

 芙蓉だけじゃない。他の姐さんたちだって、みんな同じような痛みを抱えている。

 だからこそ、人の痛みがわかる優しい人たちだ。私はそんな、花酔楼の人たちが好きだった。

(日本に帰れないのはつらいけど、預けられたのが花酔楼でよかった)

 私は改めて、心の中で余暉に感謝した。

「さあて、そろそろ支度をしなきゃね。お客さんが来ちまうよ」

 照れているのか、芙蓉はそっぽを向いてしまった。

 私はくすりと笑い、持ってきていたしよう道具を片付け始める。

 その時ふと、庭で出会った青年のことを思い出した。

 彼も、ろうで優しくしてくれた内の一人だ。彼のおかげで、私の文字の勉強は順調に進んでいる。

 確か彼は、芙蓉のお客さんだったはずだ。

 だって芙蓉の部屋の明かりを拝借している時に、私をおこりにやってきたのだから。

「そういえば、今日も来る? あの……かんの若い、男」

 名前も知らないと思いつつ尋ねれば、急に芙蓉が険しい顔になった。

 芙蓉のげ代は高額なので、よっぽどの名家の子息でもない限り若い男性というのは少ない。

 私の知る限りでは、あの男が最年少のはずだ。

 まさか、聞いてはいけない相手だったのだろうか?

「なんだい。アンタが客を気にするなんてめずらしい。まさかアンタらんどうなのかい?」

ちがう!」

 思いもよらないてきに、思わず思いっきり否定してしまった。

(孌童って要はおさんってことでしょ!?)

 お客さんのことを尋ねただけで、まさかそんなかんちがいをされるとは思わなかった。

鹿だね、じようだんだよ」

 そう言って、芙蓉は楽しそうに笑った。

 どうやら、からかわれたらしい。

 そこには先ほどまでのそう感などじんもなくて、私は怒るよりもほっとしてしまった。

 なんとなく話をされたような気もしたが、今はそんなことどうでも良かった。






 夜のとばりも降りて、花酔楼で最も広い客間にはしよくだいほのおれている。

「それで、いい加減教えてはもらえないか?」

「そうはお言いになってもねぇ。アタシにはなんのことやら」

 女のようえんみを、男はものともしない。

せいしんのう様は、若返りの秘術を持つ者に金百きんあたえるとまで言っている」

「そんなこと言われても、花酔楼にそんな者はいませんって。なにかのちがいじゃございませんの?」

 そう言いつつ、芙蓉は男に酒をすすめた。

 き通ったそれは、こうていが飲むのと同じ最高級の酒だ。

 しかし男は口を付けもせず、あいそうに言葉を続けた。

「それにしては、ここ最近の花酔楼の女たちの評判はたいしたものだ。そのほおからはしわが消え、一回りも二回りも顔が小さくなったと聞くが」

「はん。二回りも小さくなったら消えてなくなっちまいますよ。楽しい酒も飲めないなんて、なお方」

 そう言って、芙蓉の方が先におのれの酒を飲み干した。

 ほうっと息をいた彼女は、せんによもかくやというほどに美しい。

「これはお前のためでもある。花酔楼の話が陛下の耳に入れば、その者はにでも後宮に連行されるだろう。お前たちもかくし立てしたとばつを受けるかもしれない」

「仲間を売って金を受け取れって? こくよう様は下町のうわさを知っておいでかしら。きゆう殿でんの北門から出る荷馬車に乗るは、聖母神皇様のがんの成れの果てってね! 大体、あのお方のお陰でどれほどたみぐさが辛いおもいをしているか。とうだの庭園だのって、新しい建物ばかりお造りになって、えきで男手を取られた家がどうなるかお分かり? 食べてもいかれず、泣く泣く娘を売り渡すのさ。え死ぬよりはマシだろうってね!」

 芙蓉は怒りにふるえた。

 皇太后のちやのお陰で、売られてきた少女が花酔楼にも少なからずいたからだ。

「口をつつしめ。誰がどこで聞いているかわからないんだぞ」

「死ぬのがこわくて妓女なんて務まるかってんだい。気ががれた。今日はもうお引き取り下さいな!」

 芙蓉はそう言い放つとさっさと見習いの少女を呼び、おだいじんのお帰りだといやみたらしく告げてしまった。

 黒曜と呼ばれた男はためいきをつき、帰りたくを始める。

 彼は名家であるこくに連なる貴公子で、若くして科挙にも合格した英才だ。

 少なくとも芙蓉はそう聞いていたし、実際かねばらいもよかった。

 しかし芙蓉は、この若くして将来有望の官吏があまり好きではなかった。

 花酔楼の妓女たちのぼうが増したと評判になり始めたころから、どこで聞きつけたのか彼は突然やってくる。

 官吏には珍しく野性みのある色男だ。彼のような男がつや街にくれば、当然噂になるはず。

 しかし今まで芙蓉は、黒曜という名前を聞いたことがなかった。

 そして黒曜は花酔楼に来るたび、芙蓉のとこに入るでもなく美の秘密を渡せと言う。

 その美のけつを持つ者をきゆうていし抱え、皇太后にささげる───と。

 確かに小鈴のもたらすざんしんな美容法は、皇太后を喜ばせるだろう。謝礼だって十分にはらわれるに違いない。

 しかし養母ははや妓女たちは、がんとして口を割らなかった。それはあの心地ここちよいマッサージをしんだというよりも、小鈴を心配してのことだ。

 皇太后は確かに、気に入った者には気前よくほうを取らせると評判だ。

 しかしその一方で、彼女のために後宮に入って、無事にもどった者はいないという。皇太后はしようで、飽きた玩具は物でも人でもすぐにこわして捨ててしまうのだと。

 先ほど芙蓉が言った科白せりふは、それをつうれつに皮肉ったものだった。

「それにしてもあの男……」

 すでに黒曜が去った後、明かりを落として一人になった芙蓉はつぶやいた。

「てっきり皇太后に取り入ろうとしているのかと思ったのに、なんでアタシをとがめなかったんだ?」

 一体何を考えているのか。

 芙蓉は難しい顔で、窓の外を見つめた。

 そんな彼女の小さな呟きは、だれにも聞かれることなく夜のやみにまぎれてしまった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る