-第10話-【刹那】

『パァン!』

くっ…。撃たれたか。流石に防弾チョッキにも限界があるかと思った。

『バタン!』

倒れた。否、倒れた音がした目を開けると、俺に銃を向けていたはずの襲撃者は倒れていた。

「え…?」

後ろを振り返ると、銃口から煙が出ているSMGを持ったコマがいた。

「俺のこと忘れんなよ。」

「あ、ごめん。」

そう言えばいたな、コマ。おかしくなって俺らは笑った。

その後、総力をあげての応戦に、流石の襲撃者達も諦めたのか、拘束されたのか、殺されたのか、その後は出動要請が次第になくなっていった。そして、基地の安全が確保され、防弾扉のロックが解除されたのは、襲撃開始から五時間後であった。

『学防隊員は、安全を確認後、各自装備を解除し、いつもの会議室に集合。以上で共通無線の連絡は終了する。』

はあ、疲れたな〜…。そんなことを思いながら、戦闘待機室に戻った。

「ほらほらー!お前ら早く席につけー!」

いつも通り橘隊長の掛け声でみんなぞろぞろと座った。全員が座ったのを確認して

「えー、それでは【6月2日発生、基地内への侵入に対する防衛作戦】の報告、及び【6月2日発生基地内侵入経路に関する報告】を行う。」

うわ、長々しいのが二個も並んだよ。内心で笑いつつ、話に耳を向けた。

「…今回の事により、今までに無い危機的状況に陥っている事か判明した。」

その言葉に、驚いた者はいなかった。今まで入ってこらないと言われ、安心しきっていた本部の基地に侵入されたのだ。それでいて普通でいられるわけがない。そこ以上に皆が気になったのは、どうして侵入されたのかだ。

「そんで、侵入された経路についてだが、調査の結果、地上から基地に向かって何者かによって開けられたとみられる穴が見つかった。」

穴?そんなのどうやって。

「そして、その穴の近くには他にも何個か穴が開けられている。多分、適当に開けてって、たまたま繋がった所が防犯カメラの死角だったんだろう。」

そんな偶然、あるのか。まあ、無くはないか。そんなことより、こちらからすると馬鹿みたいに穴を開けられていたら困る。ん?てか、あの地下通路って鉄で何重にも重ねてたんじゃなかったっけ。それを削るって、逆に凄くね!?

「…えーと、そんで、今後絶対に穴を掘られないように地上と地下通路の間に厚さ5cmの金属板を入れることになった。」

おー!それなら…、でも、どうやるんだ!?

「まあ、詳しいことは業者に任せたからとりあえず大丈夫だと思う。一ヶ月もあれば終わるそうだ。」

人任せなのね。まあ、一ヶ月で終わるならいっか。その後はいつも通りつまらなかった。

「つーかーれーたー!」

俺とコマは自販機の前のベンチに座っている。

「いやー、にしてもコマありがとなさっきは!」

「ホントだよ、お前に怪我されたら困るわ!」

「そりゃあそうでしょ!」

「調子のんなよ〜!」

「まあまあ、この隊長様が怪我でもしたら困るだろ〜!」

そう、俺は、【第8支部第一分隊】隊長なのだ。

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