-第5話-【絶望と希望】
「えーとですね。まず、我々学校防衛隊、まあ、通称【学防隊】なんて呼んでいますが、なぜ、この学防隊が存在するのか、説明していきたいと思います。」
そう、あれは12年前の春、桜が見頃を迎えていた時に、それは起こった。
『えー、ただ今入った情報によりますと、東京都の都庁が、何者かによって占領されたどのことです。』『何者なのかは依然としてわかってはいませんが…』『テロの可能性はあるのでしょうか?いやー、私本当に不安で…』『中の様子は全く見えないようですが、本当に大丈夫なんでしょうか?いやー、今のところはまだ…』
どこのテレビ局も、予想すらしなかった。
『ば…爆発しました!ただ今都庁が爆発しました!えー、依然として状況のが分かりませんが…』『犯人はテロ目的なのでしょうか!いや、まだ詳しいことは…』『これはテロ事件と言ってよいのでしょうか?…』
午前9時、東京都庁爆破。
『えー、今度は国会議事堂が何者かによって…』『また爆発するのでしょうか?いや、そんなに爆発するようなことは…』『日本は今どうなってしまったのでしょうか?…』
午前10時、国会議事堂爆破。
しかし、テレビは、それでも完全にテロを認めはしなかった。
その後、続けざまに首相官邸、高層ビルを次々に占領、爆破を繰り返した。その後、東京は廃墟と化した。
これに対し、政府はなんとか生き残っていた情報網をすべて使い、非常時用に作ったという地下避難所に子供を全員入れるよう宣告した。確かに、その地下避難所に子供は全員入った。馬鹿みたいにでかかったらしい。しかし、取り残された親達は、どうすれば良いのかと、途方に暮れている所を、襲撃者たちに殺された。
しかし、数は圧倒的に少ないが、大人も数百名は生き残った。恥を捨て、子供と一緒に地下避難所に行ったもの。政府の官僚で、避難を許可されたもの。そういう人間しか生き残れないような、残酷すぎる襲撃だったのだ。
時は経ち、東京はある程度元に戻ってきた。親が死んだ子供たちのために児童保護施設が作られた。しかし、親をなくし、取り残された子供たちはどうするのか。もはやボロボロになった政府は、どんなに良い首相になっても、南海首相が変わっても、使い物にならなかった。
2052年、再びテロが起こり始めた。しかし、これはもしもに備え、訓練を強化した自衛隊がなんとか食い止めた。問題はその後、テロリスト達が狙ったのが、自衛隊のノーマークだった【学校】だったのだ。彼らは、学校を一つ爆破し、全員死亡。ひとまずの平和が訪れた。
その後、この学校(東京第8中学校)の橘生徒会長がこのままではまずいと、全中学校へ向け、自己防衛組織の結成を呼びかけた。彼が語ったことはこうだ。
『テロに屈した日本。この国を救うのは、言論ではない。武力だ。団結せよ、中学生よ、小学生よ、大人よ!我々は決して屈しないぞ。我々は“刑法第36条 緊迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずした行為は罰しない。”この法律の拡大解釈に基づいて、今、ここに【学校防衛隊】の設立をここに宣言する!』
武力の行使とはいえ、その言葉は、テロに対して何も手出し出来なかった、日本中の全中学生の心に火をつけさせた。
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