選定と淘汰と花束を②
技の掛け合いが始まってから約10分が経ったが、未だにジュンは息を切らしてすらいない。
それも一方的にこちらが数の暴力で攻めていながら、漸く今さっき掠ったヨルムの一撃が、1度だけ入っただけだった。
ジュンの傍らに浮いているシルフィードに何度も阻まれ、隙を作るための弱い攻撃では逸らされ、まともに当たってくれる事すらしない。
「どうした、1歩も動いていないぞ私は。良い所まで来たのは本気を出していない舐めたやつだけだ。どうなってやがる、そんなに私の教えが悪かったか」
「いや、完璧過ぎる程だ。以前ならここまで持ちこたえるなど出来なかっただろう、だがジュンに教えて貰ったものだけだと侮らない方が良い」
「シルフィード!」
「トールハンマー!」
龍力を纏わせた翼を広げて千々り咲く雷をヨルムが防ぎ、擬似的に形を成したミョルニルを叩き付ける。
シルフィードが展開していた風の壁を切り裂いてジュンの剣にぶつかり、鈍い音を響かせて弾き合う。
今まで1度だって剣を手から離さなかったジュンだったが、私の一激を初めて受け切れずに剣を手放す。
大きな隙が出来た私の代わりにナハトが畳み掛け、黒く染まった左腕を振り抜いて受身を取ったジュンを吹き飛ばす。
「やるな、だが私と言う壁は簡単に越させはせん!」
「貴女に頂いたこの強さで、必ず貴女を超えてみせる! 私のやり方は皆と協力する王道だ、帝国の誰も成しえなかったやり方で超える」
「双方剣を収めなさい、私の子が争い合うなど看過出来ません。ジュンは意地を張らない、クライネたちもムキにならないの」
影の中から姿を現した神王陛下の喉元で剣を止め、傍らに立ったセルマがナハトの腕を絡め取り、新しく姿を現した金色の鎧を身に纏った騎士がヨルムの毒槍を剣で突き崩す。
全員が一瞬止まった瞬間を見逃さなかった1つの影が、すかさずこの場に最悪の1打を投下する。
「神王!」
中央帝国から派遣された戦後処理部隊の老兵が神王陛下にナイフを突き立て、少し遅れてジュンが老兵を叩き斬る。
「全員武器を捨てて腹這いになれ! 抵抗する者は血縁者も全て排除する、クライネたちもだ!」
「この剣を捨てる事は出来ない、私がこの剣を離す時は夢が叶った世界でだ。たとえ死のうとも離しはしない」
「アリオト、ミザール手伝え」
アリオトと呼ばれたセルマは剣を構えて臨戦態勢に入るが、ミザールと呼ばれた金色の騎士はピクリとも動かない。
「何故貴様の命令で動かなければならない、私の主君は陛下だけだ」
神王陛下を抱き上げどこかに行こうとする金色の騎士を止めようとしたジュンに、飛び出したチェリーとリュリュが同時に攻撃を仕掛ける。
左手を振ってリュリュの斧を砕き、右手の剣でチェリーの槍をへし折る。
「邪魔をするな! 今すぐ神王陛下を……」
「2人に傷を付けないで!」
ひと振りで飛び出した2人を斬ろうとしていた大剣を、今度は素早く踏み込んだナハトが剣で受け止め、黒い翼から羽を舞わせて雨のように降らせる。
鎧を瞬間的に消したジュンは腰の剣で斬り上げ、全ての羽を天井へと進路を変えさせる。
「っ……待てアイリス!」
「ふんっ、何も届かない。貴様の手など、その鎧の色の様に呑まれる」
再び余所見をしたジュンに向けて手探りの一手として発光する小さな矢を投じ、閃光が炸裂すると同時にヨルムを飛び出させ、少し間隔を開けて8方向から襲い掛かる雷を放つ。
胸の前で掲げたジュンの持つ剣が淡い光を纏い、閉じていた瞳をゆっくりと開く。
「神に見捨てられし
ジュンの携える剣からは城の天井を吹き飛ばす程の魔力が溢れ出し、城の壁や屋根を吹き飛ばす。
気圧されて立つこともままならなくなり、何とか打開しようとストレルカを放ったが、ジュンに到達する前に魔力に掻き消される。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます