答えだらけ②
訪問者が去ってから暫くした後、ミレニアの言葉を受けてから一向に進まなくなった軍議は、徐々に戦争の道しか残さなくなっていた。
中立な立場に立つか、それとも徹底的に抗戦をするか。
考えたくはないが帝国に従うか。
どれを取ってもやはり犠牲は避けられず、何よりも服従以外は帝国が許さないだろう。
周辺国と手を取り合って帝国包囲網を敷き、この大陸の勢力図を変えてしまうか。
だがそんな現実的でないやり方は通用しない、ならば道は最初から見えていた。
甘い考えのままでは全て押し潰される、民も国土も子どもの描いた夢も、そして自分の夢も。
「皆さんの意見を聞かせて下さい」
「やむを得ず、戦争に一票」
言い難いその言葉を初めに発言して挙手したのは、戦争反対派の筆頭であるガルドナル将軍だった。
それに続いて全員が手を挙げ、満場一致で戦争への意思を示す。
「……我々パレス王国は、人間側として戦争に参加致します。これで議会を閉じます。では各々方、抜かり無く」
全員が去った静かな部屋の椅子に座っていると、ドアの隙間の向こうで綺麗なブロンドヘアーが揺れる。
その上に青色の癖の強い髪がぴょんとゆっくりと出て来て、目だけで部屋の中を確認する。
その様子をじっと見ていたクライネはヨルムの紅い目と視線が合って、にこにこしてからゆっくりと顔が引っ込む。
それに少し遅れてブロンドヘアーが引っ込んで、ドアの向こうで何かわたわたしている音が聞こえる。
「入って来て下さいヨルムさんジャンヌさん。伺おうと思ってたのですが、来てくれたなら助かりました」
「もしかして、帰れとかですか?」
部屋に入りながらジャンヌが顔色を伺うように言い、相変わらず普段と変わらないふわふわなヨルムが笑顔で続く。
「違いますよ、私も少し寂しかったので助かりました。私の側近さん」
「え?」
「あらあらまぁまぁ、昔のアイネちゃんみたいに強引なのね〜」
固まるジャンヌに対して、頬に両手を添えたヨルムは笑顔で近くの椅子に座る。
「それで、お二人は何か用があったのでしょうか」
「はい。まずはクライネ王に御挨拶と、これからよろしくお願いしますと言うことですね」
「違うでしょジャンヌちゃん、クライネちゃんが寂しがってると思ったから来たんでしょ〜」
「いえ、少し前まで共に居たとしても、一国の王に……」
「寂しがってると思ったから来たんでしょ〜?」
「……そうだったと思います、いえそうでした」
「よね〜」
何度も首を縦に振るジャンヌを見て満足そうに机に突っ伏したヨルムは、角と尻尾と翼を出してリラックスモードに入る。
「クライネ様、国境辺りで争いが起きました。まだ我々の国には及んではおりませんが、いつ国境を越えてくるか分かりません」
突如防衛大臣が血相を変えて部屋に入って来ると、いつの間にかヨルムとジャンヌの姿は無かった。
その代わりに刀身の黒い短刀と、見慣れないキレイな花が一輪机に残されていた。
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