答えだらけ①

再び静まり返った議会は、各々が頭を抱えながら思考を巡らせる。


「よろしいでしょうか」


沈黙を切り裂いて挙手したアイラスにそう問い掛けられ、クライネは急いで顔を上げて頷く。

すっと立ち上がった彼女の言葉は、次の瞬間にパラザリアを立ち上がらせた。


「ドラゴンと手を組むのはどうでしょう」


「そんな事をすれば人類が全て敵に回るであろう!それに我々と手を結ぶドラゴンが居ると思うか!」


「それは貴方の単独行動も影響しての事です、自刃なりなさって責任をとったらどうですか」


冷静に返すアイラスに今にも掴みかかりそうなパラザリアを目で制して、ズレた議題を修正する。


「そんな事を議論してはいません、そしてこれは私の責任です。上手くいけばですが、ドラゴンとなら手が組めるかも知れません」


「それは本当ですか」


「本当です、ですが今はアテが何処に居るか分かりません」


「なら望みは殆どありませんか」


「あります、見つけられる人がひとりだけ居ますから」


「なら、そのお方をお呼びしましょう。ドラゴンが居れば負ける方が難しいくらい強力です」


方針が徐々に固まって行く中、部屋のドアがノックされてゆっくりと開く。

入室をした大臣が、一枚の紙を持ってクライネの横に歩み寄る。


「公国の天馬騎士副騎士長が我が領空を通りたいと言っているのですが、いかが致しましょう」


「貴方に一任している筈ですが」


「それが特殊なのです、天馬騎士は分かるとしても。その他多くの騎士が天馬に乗っておらぬのです」


「私が行きます、ターニャさん同行願います」


「いえ、それが代表がこちらに来ているので、この場に通します」


恐らく来るであろうアイネと会話が出来るのを楽しみにしながら座って待っていると、ドアが向こう側から開けられる。

だがその中に見知った顔は無く、気高いオーラを纏った女性と、小さな角を生やした少女が入って来る。


「謁見させて頂き感謝致します、私メリュー公国天馬騎士、副騎士長を努めさせて頂いております。ミレニア・ファンドと申します」


「ご要件は分かっています、我が国の横断は許可します。ひとつ、アイネ・トールと言うドラゴンをご存知でしょうか」


「いえ、私は何も……」


「知っています。我が軍の総大将です、今は国境で待っておりますが、それが如何致しましたか」


「そうですか、通行を許可します。議会の途中でしたので早々に退室願います」


「それは失礼致しました、ですがひとつ忠告を。ドラゴンは人間なんかと同盟など組みませんよ、人間とは相容れない存在。時代が追い付いていないのです」


ミレニアの忠告は最もであり、生活を共にしたクライネだからこそ分かるもの。

それもあんなお人好しは人間では殆ど居らず、ドラゴンでも他に居るかどうか分からない。


それに別れの後に以前のままの心持ちで会う訳にはいかない、殺して殺し尽くして、一国の王として会えなければ会う資格が無い。

アイネが来なかったのは、逆に幸いだったのかもしれなかった。


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