9話ー4 操り人形達の夢
「これは……
「何ですってっ!?」
突撃を敢行する
導師の要塞に起きる異変が、モニターへ視線を移した
要塞中心部より放たれる魔力光の帯が、
暴れるその
「カグツチ君!感じる!?この負の霊力——」
『ああ感じるとも、主よ!間違いなく命の闇の本体【ヤマタノオロチ】の物だ……!』
無数の帯はやがて負の霊力を帯びた機械群で7本の首を構成——すでに出現した物と合わせ、八本の蛇頭が
要塞後尾――そこへも蛇神の尾と思しき機械物により形成された物が顕現。
かつて【ヤマタノオロチ】と呼ばれた、日本神話における荒ぶる大蛇神の全体像が蒼き天空を穢れにて浸蝕した。
「
日本神話において、【ヤマタノオロチ】を
その
そして……今天空を駆け、深淵と対峙するは同じく天津神【ヒノカグツチ】を接続せし魔導超戦艦【
邂逅する因果が大いなる厄災を討てと、クサナギを継ぎし少女を然るべき舞台へと導いていたのだ。
宿敵を前にしたクサナギを継ぎし
「ええ……挑んで見せなさい!……カナちゃんさん——」
「
だがそれでも同じ宗家の者として、勇しき少女がその責務を遂げて欲しい――二つの相反する板ばさみな心境のまま指示を飛ばす。
憂いの当主の意思を代弁する様に、求められる情報を
『ちょう待ちや……出たで!霊力圏外距離――【大和】半径2km以上!そこでの制限時間は——五分が限界やっ!』
それでも——少女の意思を汲み用意した策。
クサナギ
一つは本来魔族用の【
【
王女の【
そしてもう一つ――表門当主も想定したからこそ使用許可に漕ぎ着けた、
高次時空間通信は本来恒星間通信用とし生み出された技術である。
本来地上での使用は各粒子・大気・重力の影響により正常に機能しない――が……
言わばその高次空間通信への霊力波を乗せ、小さな当主との霊力接続を強引に延長する策である。
制限時間付き――それでも、小さな当主が力を存分に振るうには充分であり、万一に備え合わせて認可を取り付けたのだ。
まさにこの起こり得る事態へ向け、奮闘した大人達の支えが……三神守護宗家初の小さな当主に比類無き力を与える。
「分かりました!……
「はいっ!叔母様っ!」
「ヴァンゼッヒ!
「えっ!?ちょっ、はぁぁっ!?さらっと何無茶な指示飛ばしてんの!?こっちもギリだしっ……!無理——」
油断していた
容赦なく裏門当主から無茶振りされた指示に、思わず抗議を上げようとしたが――
「お願い、アーエルちゃん!私……テセラちゃんのために、あの【ヤマタノオロチ】を抑えなきゃいけないの……!だから——」
「……ぅうう~。わ……分かったよ!その代わりちゃんと仕留めるしっ!?」
例の
紅潮する頰へ小さな当主への多分な好意を浮かべ……含まれた
そしてそこへ――
『テセラちゃん!
「ロウさんっ!?後方はいいんですか!?」
テセラの道を切り開くため、鋼鉄の白馬の騎士が
『大丈夫!日本への防衛線なら、伝説の方々に任せた!なんせ彼らは本家本元――日本を守護し続けた守護神だからなっ!だからテセラちゃん——』
『オレにも君が前に進む道……切り開かせてくれ!宗家を
「ロウさん……!」
眼前には、吸血鬼を体内に封じる命の闇。
負の化身であるその蛇神は、見るもの全てにあらゆる負の感情を起こさせ——負の
しかし――
その
今は亡き狂気の魔王として恐れられた
「各員!そのまま【ヤマタノオロチ】へ突撃!恐らくあの状態――オロチが暴走というよりも、融合を
「私にも感じます!私の中で強く……【
吸血鬼の抗いは即ち、本人が未だ健在であるという事実と確認しあう。
しかし
「みんな!行こうっ!」
王女の号令――
凛々しき声に続くは、二人の魔法少女と天駆ける
供に王女の
そして……
****
「こちらも向かいます!艦首を【ヤマタノオロチ】へ……出来るだけ
心を一つにした私達。
その背後から放たれるは偉大なる超戦艦の艦砲射撃一斉射。
目の前を埋め尽くす
「あんたら……ウザイって——言ってんだしっっ!!」
アーエルちゃんが放つは大天使カマエルの力の加護。
その象徴でもある
「カグツチ君!……クサナギの魔を払いし力に――あなたの神の業火を!」
後方――大和に接続され、今もその超戦艦に最大出力を
けどその程度で、カグツチ君の
認可を取り付けた超短距離のクロノ・サーフィング通信は、霊力的な結合に距離が生じた二人の今の状態にこそ生きるのです。
『行け、我が
この星の大気を震撼させる程の神霊力が、蒼き
直後——魔を穿つ守護宗家最大奥義が起動したのです。
「クサナギ流閃武闘術……百式・対魔討滅決戦奥義――」
【
放たれる威力を物語るそれが、一振り――また一振りと
『二人とも!この決戦奥義は溜めがいるっ!
奥義の全容を知るロウさんの言葉に、私とアーエルちゃんは必要と思われる行動へと移行――溜めにより無防備と化す
「アーエルちゃん!また来るよっ!」
「分かってるし!あんたも油断すんなよっ!」
『溜めに注力する間――
もがく様に荒れ狂う深淵と、それを穿たんとする
それを襲う魔族機兵を押し退ける私達。
直後……八振りの巨大刀剣が【
そして静。
大気の時間が凍った様に全ての音が
研ぎ澄まされた全神経が注がれるは、今なお暴れ狂う八頭の蛇神。
と、彼女が深淵の中心に眩く光る生命の
刹那――蒼き大気をも切り裂く怒涛の超大なる剣撃が、時空すらも焼き焦がす様に放たれたのです。
「
カグツチ君と一体となる
振り抜かれたのは、八条の巨大なる蒼炎であり蒼刃。
静の構えから
走る八条の閃光が、蒼き大気の果てまでも貫く様に走った後には――
かつて神世の時代……一度は
****
神霊力により生成された、音速を軽々と凌駕する業火の斬撃が……大気を摩擦で激しく燃焼させ――さらに捲き起こる、空域一帯を包んだ蒼炎までもが深淵へと襲い掛かる。
そして轟音と共に切り裂かれた八本の蛇頭……最大級に圧縮された、破壊の炎神纏う討滅最大奥義を前に無残にも塵となって消えた。
それに同調した様に魔導兵団が動きを止める。
深淵から漏れ出す負の霊力がそれらの動力源となっていたためである。
「魔族機兵が――停止……した?アーエルちゃん!?」
「ああ、こっちも確認したし!」
「……やった!やったよカグツ――」
事のあらましを見定めた
が、突如途切れる炎神の神霊力。
真鷲の棟梁が算出した霊力切断の時間制限――そのタイミリミットがすでに超過していたのだ。
「
小さな当主同様、その点が一瞬とは言え抜け落ちていた
その彼女が叫びと供に動くよりも速く――落下を始めていた小さな当主を抱き止めたのは、他でもない……彼女の霊力切断後を任されていた
「……ふぅ――ちょっとびっくり。集中しすぎて霊力切断の事、忘れるとこだったさ(汗)」
「おい……アタシにあんだけ
「……アーエルちゃんが助けてくれるって信じてたもん。」
「なっ……!?て――あーもう!突然何口走ってんだしっ!?」
「ははっ……
他人事の様にテヘッ☆と舌を出す可愛い当主様に文句をつけるも……絶大な信頼をダイレクトな言葉に変換されたために、耳を真っ赤にしてそっぽを向く――狂気が絶賛お休み中の
この窮地を脱した直後に思わず迸った、唐突なる百合展開にはさしもの王女も弄り待ったなしであった。
『各員……まだ油断出来ませんよ!』
その少女達のやり取りを見やる
今しがた放たれた決戦奥義によって
導師の私設要塞を包む深淵の気配が霧散。
それが崩れ去る事で顕となったのは――この決戦において最終目標となる
今尚
赤き少女に宿る
「――
最終目標の姿が顕となった直後、超戦艦オペレーターよりレーダーへ異常確認の報がブリッジを走る。
深淵の力を大きく弱め、魔族機兵が停止したこの瞬間――真っ先に吸血鬼の
蒼き天空で妖しく舞うゴシックドレス。
地球の闘争の歴史を最前線で潜り抜けた者であれば、深く記憶へと刻まれる存在――
「初めまして……。
「……【
眼前のモニターへ刻まれる現実へ声を上げたのはヤサカニ裏当主
――星の守り人たる存在が敵対者側に付く――
それは場合によっては人類側に非が発生している事を意味すると、大戦を生き抜いた当主には揺るがぬ真実として記憶されるが――
今
「ご安心下さい……。
元来星の
しかし今……星を見る者が存在していないこの地球は、その行く末を明示出来る者が存在しないのと同義。
なればと
「そんな中ではありますが、最後にあなた方へ合わせたい方々――いえ、会いたいという者達をお連れしました……。さあ、みなさん——」
すでに事への介入も儘ならぬ守り人が声を振ると、答える様に宙空へ現れた影は四つ——その姿は金色の王女も良く知る者達。
否……それどころか幾度も刃を交えた操り人形達であった。
「セブン、さん?それに……
「……すみませんね、王女テセラ。一刻を争うこの様な時に……。」
敵対した事でよく知り得たはず――だが少女達は妙な違和感……今まで相対して来た様相とは別人の様な雰囲気
中でも金色の王女が最も一番顔を合わせているであろう剣の人形から……予想外の言葉が
「この様な時ではありますが……あなた方に、折り入って頼みがあります。……どうか我らと——最後の手合わせをして頂けないでしょうか……。」
「セブンさん……!?」
剣の人形が語る言葉を耳にした王女は驚愕の中にも、ささやかな光明を見る。
ともすれば眼前の作られた人形達とも心が通じ合えるのでは無いか——
だがしかし……直後に剣の人形が続けた言葉によって——王女のささやかな希望も絶たれる事となる。
作られた人形である彼女達の……たった一つの望みを叶えると言う形で——
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