6話ー3 宗家絶対防衛戦 (前篇)
「ローディ君!……施設まで魔導転移……いける?」
二人の
いえ、むしろこちらが本命と聞き——私たちは急いで宗家の軍事施設に向かいます。
私達が遠からず実行する、地球と魔界の衝突回避作戦――その最初で一番肝心な作戦。
その
けど、現状どちらを欠いてもきっと作戦は失敗に終わります。
作戦失敗――それは、地球と魔界衝突回避の希望が断たれるという事です。
「絶対に軍事施設を守らないと……!」
私の心の中、そこにいつの間にか姉さまの様になりたいと思う一心……多くの人の上に立ち――それを守らんとする、王族の
ただの一学童であった時に否定していた、遠い世界の存在の様な感覚――それはまさに自分にとっての紛う事無き現実だったのです。
けど今は――
遠い存在でも……決して大切な人と
だから今は守るべき人達——地球の人類とか魔界の魔族とか関係なく……全ての人の未来のために――
私は……戦います!
****
宗家施設上空――現れたる
そこにはすでに、導師側の戦力である
「——もう導師側の戦力が……!?……あれ……?」
目にした顔ぶれは全て敵対者――思考へ最大級の警戒と同時に最悪の状況が脳裏を
しかし、導師側の戦力と施設間に一人の少女が立ち
「……もしかして、
金色の王女はクサナギの小さな当主が、魔法少女として戦う機会を一度も目にしていない——ゆえに一瞬その姿に判別がつかないのも無理はない。
確信を得た王女はすかさず
「
「大丈夫だよ、テセラちゃん!……まだ戦いは始まっていない!」
「
王女がそうが口にしようとした刹那——導師側の戦力と自分達の間に落雷とも思える衝撃と閃光が着弾する。
「……クヒッ……遅いご到着だな……テセラ……!」
衝撃の着弾地点――巻き上がる煙の中より現れた者。
それを目にした金色の王女の脳裏へ、学園で襲ったいつぞやの
「アーエ……違う——
「あんたが遅すぎて待ちくたびれたし……ククッ。」
思いもよらない相手の登場に、
それを片手で制し——クサナギの小さな当主が、それはもう可愛い怒り顔で
「……ちょっと、アーエルちゃん!今日はエルハンドさんの指令できてるんでしょっ!ちゃんと私達の援護をお願いしますよ!?」
すると——思わぬ事態……。
狂気が装備を纏ったと言っても過言ではない
「……あー……うん。分かってるし……ちゃんと
桜花だけと言う言葉にムッ!と小さな当主がまたも可愛く睨め付けると——まさかの断罪天使、狂気は残るも困り果てた顔で視線を泳がせた。
「わ……分かったよ……必要ならテセラの援護も……する……よ。」
覚悟の上で舞い降りた金色の王女――しかしあまりの状況の和やかさに、時が止まったかの様に呆けてしまった。
「——あの……
あえて断罪天使をアーエルと呼称し小さな当主へ真意を問う。
「ああっ——えっとね……アーエルちゃんの上司さんはね、表門当主でもある
意外すぎる関係性に、へぇ~とさらに呆けた顔で王女が断罪天使へ視線を寄こし――
「ああぁ!?何だし——何か文句あるかっ!?」
「ヒッ!?」
断罪天使――狂気の少女がそれ以上直視したら、何をしてくるか分からない程の怒気を王女へ叩きつける。
しかし真っ赤に染まる耳を見る限り——恥ずかしさを誤魔化している感は拭えないが。
「そちらの戦力はそれだけか……。ではそろそろ始めよう……。」
想定していない斜め上を行く事態に、状況の深刻さが頭から完全に抜け落ちていた王女。
目の前の赤き少女の言葉で、呆けた姿から現実に引き戻される。
「……レゾンちゃん……まさか、待ってくれてたの?」
だが――その王女の言葉をかき消す赤き
「……ちょっ……!?レゾンちゃん……!」
返答は突撃と言わんばかりの赤き少女——辛くも懐への侵入を回避した王女。
それが合図となり、
地球の最大戦力である少女達と、導師側の誇る最大戦力——相容れぬ者同士の戦いの幕が切って落とされた。
****
「レゾンちゃんの相手はテセラちゃんがするよ!だから——あなたのお相手は私っ!」
赤き吸血鬼よりも先に王女強襲を狙った
クサナギが誇る対魔刀剣【アメノムラクモ】を抜き放ち、
クサナギ裏門当主
「私の邪魔立てするのであれば、あなたから始末します。」
持ち込まれた
同じく刀状の武装を振るう彼女は、させじと巫女を思わす姿の少女を力任せに弾く。
「相手としては、私——相性よさそうだよ?」
刀の魔導姫の力任せの弾きも、難なく耐え凌ぐ小さな当主――想定しない強敵到来に、またしても無機質な表情の奥で
「——またしても想定外……とんだ
****
「何だ……?アタシの相手はもしかして雑魚ばっか?——舜殺してやろうか……クヒッ!」
小さな当主と別方向では、完全に元の調子を取り戻す断罪天使——待ち侘びたと言わんばかりの狂気を容赦なくぶち撒ける
相手は三体の
同時に突撃敢行した銀の狂気に、魔導人形達はそれこそ狂気の沙汰と受け取った。
「バカかこいつ——遠距離武装で突撃など……。餌食になりたいのか?」
「愚か……私達全員で——滅す……。」
「囲むよ——ガゼル……スプリンテ……。」
二人の魔導人形達へ指示を出す、指揮者と思しき魔導姫の少女。
体躯は他の二人の真ん中程度——長く無造作に伸びた髪と、明らかに非武装に思える姿で距離を保ちつつ、断罪天使の出方を
非武装らしき少女の指示で宙空を駆ける、長身でセミロングヘアーにしなやかながらもパワーで押し切る
人形中最も小柄なスプリンテは前髪……後ろ髪を全体的に切り揃えたショートヘアー ——小柄な体躯に見合ったスピード重視の戦術を活かす、両手両足各所に近接用ブレードを装備し同じく狂気の少女に相対する。
待ち構える様に断罪天使の進路上へ舞う、三体の
否……近接武装を纏う魔導人形の少女達が先手を奪い、強襲したはずだった――
「銃で近接戦が出来ないなんて……誰が決めたし!?クククッ……!」
肉薄し決着出来ると踏んでいた二人の
「こいつ……銃で近接武器を防御——したのか!?」
そして魔導人形達は晒される事となる。
主への祈りを狂気の正義に変える、
「はっ……!この程度じゃあたしは止められないよ!——見せてやる……アタシが
「エイィィメンッッ……!!」
****
意志と想いを掲げた魔法少女達は、
その最中、いつもの突撃が身を潜めた導師側の魔法少女――
一見不可解な行動の裏――対峙する王女へ、導師らに悟られる事のない特殊な魔導暗号通信を送る。
『テセラ……聞こえるか?』
「レゾンちゃん……!?」
見舞われる砲撃を回避し続ける金色の王女。
突如鼓膜を振るわせた聞きなれぬ魔導暗号通信――声を上げてその送り主を見るも……視線を察した赤き吸血鬼より、アイコンタクトにてこのまま続けろと
『お前とゆっくり話したい所だが、私は導師の元に戻らねばならん……。こちらから一方的に通信を送る。……そのまま聞いてくれ。』
本当はゆっくり話したい――それは王女も同じ。
だが今の状況は、それが叶わぬ事を理解している王女――その赤き吸血鬼の声を聞き漏らすまいと、全神経を聴覚へ集中させる。
『お前が魔王シュウの事を知っている前提で言うが……彼女は現在――導師ギュアネスに幽閉されている。かつての力を奪われて……今は導師へ手も足も出ない。』
鼓膜を通して
地球と魔界を救うという想いが行動原理であった王女へ、今までに無い激しい情念――込み上げるそれに少女は突き動かされそうになる。
それは導師と言う存在への激しい
が、ここでそれを振り撒いたとて徒労に終わる状況――むしろ今重要である、吸血鬼の言葉を……
『これから後の事は、私には分からない――どうするかはお前達しだいだ……。けど……もし叶うなら……私から一つ頼みがある。』
「……えっ!?」
王女は吸血鬼の予想外の言葉――頼みという発言に、思わず攻撃を停止してしまう。
『私に構う必要はない――あの
王女の脳裏に一つの記憶が明滅し……そして一つの言葉が呼び起こされる。
それは吸血鬼との戦いの最中――失った意識が呼び寄せられた高次精神領域界。
そこで出会った白き魔王――ジョルカ・イムルからの願い。
吸血鬼が願う想いと相対するかの様な、
「何をしているのです……あの吸血鬼は……!?」
最初に出鼻を挫かれ――眼前の、巫女を思わせる魔法少女の反撃で……業を煮やす刀の魔導姫。
導師からの厳命である任務遂行中――相手と
しかし感情を向けた先は、接敵している者にとっての無防備を晒す方向――さらには今しがた刀剣を交える相手にとって、
その隙へ、油断すれば確実に致命打となる正確無比な斬撃を――対魔刀剣を
寸でで回避する刀の魔導姫へ……小さな当主は、斬撃に遅れて不満を送りつけた。
「あれ……?もしかして私……
刀剣を振るっているはずの魔導人形の行動に、今度は小さな当主が苛立ちを浮かべた。
クサナギの奥義継承者としては、その生い立ちはどうであれ……刀状の武装を持ちて相対するならば一対一 ――正々堂々の精神にて、刀を交える心積もりであったはずだ。
「どうやらあなたは、武の心をお持ちでない様ですね……。――カグツチ君!」
武の心――真剣勝負の最中に、剣を交える相手からすら視線を逸らす無礼に対し……もはや敬意を払う価値無しと判断した小さな当主。
すかさずその身に宿る破壊神――炎の化身へ力の開放を願う。
「では私は、任務としてあなたを打ち倒させて貰います!」
大きく後退し、動から静――抜刀の構えへ移行する小さな当主。
納刀され……その鞘を通し膨大なる破壊の炎の本質が、クサナギの誇る
大気は研ぎ澄まされ――周囲は静寂、しかし舞う蒼炎は爆豪と共に天を焦がす。
静と動が入り乱れるその中心で、凜と構えるクサナギ奥義を継ぎし少女――視線はただ一点……無礼を振り撒いた魔導人形。
『
天津神が誇る
「クサナギ流
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