4話ー7 天空の激突 二人の魔法少女
一人は光――天空に
一人は闇――地上の地獄、人類に
しかしいずれもその存在に希望を
そして――二人は今、ここで激突する。
「
赤き突撃は王女を
その瞬間をまず制するため、赤き吸血鬼は天空を駆ける。
さらに今回は最初から王女の攻撃相殺のため、吸血鬼側の使い魔が実体化——黒き翼竜の高収束火線砲で
「……使い魔さんが分離して……!?」
戦闘開始早々放たれた、大気を音速で焦がす火線砲。
それは無詠唱に属する魔法術式——基本術式展開を要する王女に対してであ
れば、先手を取る事で奇襲へと変化する。
その吸血鬼に標的を定め砲撃体勢に移った
が——初手から魔導翼竜の放つ火線砲に対し、すかさず
砲撃相殺では
さらに突撃に備え、後方に下がるための距離を計算した射程選択。
突撃が直撃を見ぬ間に空ぶる。
「させんっ!!」
それは
後方に下がる王女を追撃し、
「ローディ君!
「
それは地上における魔族の力への
言うなれば量子が満ち
だがそれを、地球世界全体に施せるほど現実は甘くない。
であれば攻撃に必要な空間を一時的に
「マスター……謎の反応が増加しています!ご注意を!」
その異変を感じた黒翼竜の使い魔は、念話にて
「何か
マスターの返答にすかさず使い魔は応答。
追撃するレゾンの斜め後方に付き、連携して事態に備える。
赤き吸血鬼はもう——憎悪に駆られて使い魔を置き去りに突撃などしない。
絆で結ばれた使い魔がいるからこそ、自分の力が発揮できる事を理解した。
ゆえの使い魔への頼みである。
金色の王女は、通常装備の対空砲群より高威力である
とにかく
その動きは赤き吸血鬼と
勝って対話をする――そのためにまず相手を制するための戦術。
だから負けられない――その想いで自分にできる全てを総動員して勝ちに来ているのだ。
その戦闘空域から後方数百メートル。
海上にある輸送艇にて、この戦闘を予測しての海域封鎖と有事に備えた配備にて待機する宗家対魔部隊。
輸送艇上にはヤサカニ裏門当主の愛機【ヤタガラス】も操縦者と共に
「なんて……戦闘だ……。」
輸送艇甲板上——現状を目視で確認するため待機していた部隊員が
視界に映る洋上で展開される戦闘のそれは、すでに人対人の域ではない。
かつての
「当主——
当然の部隊員の反応――しかし当主
『この戦いは、
この当主は金色の王女の想いを聞き――その彼女へ、赤き魔法少女の件を
これは紛う事なき、
『我々は無用の被害が出ぬ様、ここで海域封鎖を継続するのみ、いいですね。』
激化する少女達の戦闘を視界に入れ、歯噛みするヤサカニ裏当主——案ずる心をその表情にチラつかせながらも、耐える様に見守っていた。
****
崩れぬ戦況。
拮抗する両魔法少女の
そこへ吸血鬼が魔王より告げられた、魔族世界における奇跡の力が作用――影響しているのであろう。
互いが相手の力を引き出し続けるため、徐々に攻撃の破壊力の上昇を見る。
「やっぱりだよ、ローディ君!私の
金色の王女も自分の違和感を使い魔に
ともすれば無限に力が沸き続け――永遠に戦闘が終わらないともとれる状況を想定してしまう。
「予想通りだね!けど今はチャンスを
互いに支えあい——共に戦うための知恵を出し合って今に
彼女らはそれを自分たちのアドバンテージに変え、この戦闘の中で勝機を逃さんと
やがて高空の激突が一層激しさを増す。
王女は勝負の決め手である
「テセラっ!
その合図に首肯し、急反転する王女——
赤き吸血鬼を捉えた瞳はそのままに、音速を纏い疾駆する。
「……あいつが突撃……!?」
王女の対空攻撃を回避中の吸血鬼は、一瞬予想外の反撃に
が、接近してのクロスレンジでは確実に吸血鬼のほうが有利。
「上等だ……!迎え撃つ!」
視界に映る王女を睨み、背部ユニットより抜き放たれる二双の
音速を纏う金色の疾風相手に、クロスレンジ戦の突撃を
「なっ……!?」
その王女の後方、追尾する様に使い魔が
使い魔は機械型の大鷲から、量子体を三頭の機械型魔犬【ケルベロス】の姿に変化——その口元に両刃の半物質刃を構え、赤き吸血鬼にクロスレンジで
大気を切り裂き高周波と共に衝突する刃——撒き散らされた火花を引き連れて、そのまま
『残念、レゾンさん……!接近戦ならボクも可能ですよ!』
吸血鬼のまさかの想定外——使い魔が
[——王女側の使い魔が強力なのは分かっていたが……!
増す火花が激しい衝突を物語る。
虎の子の突撃も、接敵され——
『ブラックファイア——この使い魔の力量……やはり本物だ……!それもお前と同じ、本来であればマスターを必要としない程の強力な存在だ!』
念話にて使い魔へ通信を飛ばす吸血鬼。
それを受ける、吸血鬼の使い魔側でも予想外の事態が襲い——念話への対応も疎かになる苦戦を強いられていた。
「使い魔さん!この攻撃に耐えられますか!」
黒翼竜の使い魔は
金色の王女の放つは、高出力の魔力砲撃が中心と踏んでいた吸血鬼サイド——しかし王女が新たに備えて来た兵装は、その読みを凌駕する。
王女の腰部に追加された二対半円の固定ユニット。
そこへ配される対空兵装——魔導式の半物質化マイクロ弾頭をばら撒く空対空武装に、各小ユニットへ隈なく配備された対空連装機銃群。
それはあたかも、航空を音速で駆け抜ける超速防空巡洋艦の体であった。
使い魔の能力を全開放する事で得られる武装強化の恩恵——さらに自分達の得意なフィールドに持ち込んで制する策。
王女側の戦略が見事にはまり——
金色の王女に翻弄される黒翼竜の使い魔——思う様に主を援護出来ぬ屈辱と敗北感が、彼の能力の一端を露呈させる。
「負けられない……!私は
その言葉と同時に、姿の変容を見る吸血鬼の使い魔。
攻撃力重視のパワータイプ魔導翼竜から、超高速形態のスピードタイプ魔導翼竜へ。
隆々とした体躯から繰り出す収束魔導火線砲——それが持ち味であった姿より、細身且つ空気抵抗を最小限に抑え……広がる翼は前進翼型の戦闘機を彷彿させる純粋なる高機動形態。
「……レゾンちゃんの使い魔さん——凄い!」
王女の浴びせる対空砲火の嵐が、高機動形態となり超音速に達する動きに
あまりの回避力に、一瞬迎撃する王女でさえ
「マスターー!!」
吸血鬼の使い魔が超音速で王女の使い魔を襲撃——
そして——
そこには、決定的な勝負の決め手が
王女を
赤き魔法少女が、使い魔と共に全力の攻撃を乗せる。
「受けろっっ——
その突撃を前に——王女は
「
その術式開放により二人が戦う戦闘空域に数え切れぬほどの、魔法陣・
その転移陣より、魔犬から再び変容した機械型大鷲が権限――それも全ての転移陣から——
「……これはっっ……!」
突撃を
――これは王女の
「
それは魔弾の雨——万滅の閃条。
魔弾は幾千条の閃光となって赤き吸血鬼を強襲する。
周囲を囲む転移陣へ、全てが
それにより全ての転移陣——全方位より連続的に放つ集中放火。
量子体であり——さらには
しかしここ地球上・光量子世界では、エネルギーを
ゆえに
しかし、それは王女の膨大な
いくら強力な力を持つ王女であろうとも、大きな
海域封鎖に従事する、宗家の対魔部隊に緊張が走る。
壮絶な魔力の衝突——広域に渡り大気を揺るがすほどの無数の衝撃波。
過去の大戦を知らぬ者には、
そして止む激突——訪れる静寂。
二人の魔法少女がいた空域には――
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