3話ー3 討滅の魔装撫子
「計画に変更が必要な事態ですね……。」
宗家の実力者一部のみ集められた、東京湾沿岸区画——【三神守護宗家】本部施設。
宗家施設を集約した区画——周辺を、順調な復興を遂げた都心の息吹が包み込む。
それらは沿岸部と東京湾上へ存在し——現在重鎮が招集されるは沿岸の高層建築。
今回想定されてはいたが、起こらないことを前提の計画遂行——生じた事態収集のため、再度の臨時会議が開かれていた。
「導師側に
再び会議の議長を任された、ヤサカニ家裏門当主
「本来
【
その実は【アリス】が創造した、命を纏う高次ガイノイド構想の魔霊力版であり——システム元来の構想とエネルギーの変換機構をコアとし、
魔族及び
ヤサカニ当主の言葉に続き、同席するクサナギの小さな当主がシステムの主要点について言及し――。
「ですが……システムの特性上主に魔族専用に作られたものであるため——地上の正属性である人類には余程の事が無い限り、適合者が現れる事はありません。」
その余程の事に該当した、小さなクサナギ裏当主——先の会議に引き続き、車椅子上からの発言を続ける。
「皆様——ご覧頂ければ想像に難くないでしょう。現に私の体は、継承の儀の際この様な事となりましたが——
この会議には、彼女の身体に異常を来たす原因となる継承の儀——それを強行した堅物幹部も出席しいる。
が、さしもの彼らも非を認めているのだろう——車椅子上から凛々しく発言を行う小さなクサナギの当主に、目も合わせられない。
「適合した私は、偶然にも神霊の本体を宿す結果となり……叔父である
そこで、議長に話が移り今回の状況から推測される、彼女の導き出した解が提示される。
「
現状で正確な判断が出来ずとも、解を
そして、議長であるヤサカニ裏当主はさらに続ける。
「【
ここで議長が
「こちらは、今回の件に関係するか否かは判別出来ませんが——
一瞬、会議の場がざわついた。
すでに火急の事態である——そのご時勢に魔界より魔王がこの地球に降りて来ているなど、その真意がどうであれ事は更に深刻さを深めている。
しかし当の議長はむしろその件を関係
近年の宗家事情は、世代交代が相次ぎ——価値観が古き物から新しき物へ、順次移行が必要な時期である。
しかしながら——古参の堅物連中と言う存在は、いつの時代も自分が知る範囲の常識に固執し聞く耳を持たない厄介者。
それが良い結果を生むのなら歓迎だが、当主
ヤサカニ家当主
その様な宗家の変わらない内部事情もあり、未だ小さき少女達の未来を
「今回の情報から導き出される、今後の計画に対する変更は以下の通りです……。」
この度の会議も臨時の対応で対処する、との方向にひとまず決着し会議終了となった。
****
宗家の臨時会議を終えたヤサカニ裏当主が向かう先――そこは対魔設備を集約した宗家軍事関連施設。
広大な敷地は崩壊後、都心防衛拠点として建設され——東都心を中心とした一帯の、防衛に関する大多数の各種兵装と設備が備えられる。
その軍事部門統括施設——多分に漏れず退魔処理を施す建物へ、小さな客人達が招かれていた。
「あっ……、あれだね?」
軍事施設――駐車場の見える客室にて、一足先に到着していた王女テセラと、使い魔のローディが待機していた。
客室より窓を挟み……駐車場の少し先を見やる金色の王女の視界に映る、国道より向かってくる一台のクーペの様なセダン――しかし
視界に飛び込む駐車場・スポーツタイプの車と言う光景――ふと王女の脳裏にある種の共通点を孕む状況がが浮かび——「……まさかね……。」と呟くその先で、クーペ風セダンが真横を向いた。
「……え~……っ(汗)」
視界の先で学園下校時——嫌という程目撃した光景に酷似した状況が飛び込んで来る。
額より浮かんだ汗が苦笑いと共に、お馴染み過ぎる光景へ注がれた。
周囲の視界を奪う白煙と、スキール音——奏でられる排気マフラーの爆音と共にサーキット場から抜け出して来た様な戦闘機が、駐車場にあらぬ高速で進入する。
そしてそのままスピンターン——流れるリアテールを振り回し、駐車スペースの白線内に停車した。
それには流石に、慣れたはずの光景にも——
「おおぉ~~、凄いっ……!」
すると、今しがた暴走駐車を披露したクーペの助手席に見慣れぬ同乗者——下車したヤサカニ裏当主がトランクより折りたたまれた車椅子を取り出し、組み立てた後それを同乗する少女の元へ向かわせる。
「ねえ。ローディ君あの子は?……知ってる子?」
当の使い魔も面識が無い様で、首を横に振る。
程なく客室に当主
「すみませんね……遅くなりました。今日はあなた方に紹介したい子がいます。」
ヤサカニ裏当主の言葉でその面識の無い少女が、王女テセラに微笑み自己紹介を始めた。
「初めまして、
その少女——御髪の片側を後へ上げて、後頭部上方で纏めて結い——
日本人としては異様なほどに薄く——それでいて蒼き髪質に、瞳は日本を代表する黒の輝き。
華奢過ぎず、王女より頭半分は低めの体軀は初頭部~中等部の年頃か——しかし彼女は当主と口にした。
その特別な呼称につい反応して、慌てた金色の王女が
「あっ……えっとその……初めまして。テセラです……
ちょっと慌てすぎて、しどろもどろになる王女。
魔界の王女に覚醒したとは言え、彼女は今の今まで普通の女子児童として生活していた――それ故、目上とも言える特殊な呼称へ必要以上に
本来金色の王女の方が格上なのだが、ヤサカニ
「あっ……いえいえ、そんなに
対してこちらは正常な反応である。
魔界とは言え一国の姫である少女の、あまりにも腰の低い挨拶——
これではまるで、ご近所さんののどかな挨拶である。
その光景を見て、普段はまず笑顔という物が存在しないのではないかと思えるヤサカニ裏当主——「くすっ。」と
「えっ……
それを見た金色の王女——天然かとも思えるその思考が、見事にやってしまった。
「……私が笑えないとでも……?」
「いえ……あの~、ソンナコトハ——」
ヤサカニ裏当主の目が座る。
言いようの無い威圧を、その
額に嫌な汗を躍らせながら、乾いた笑いでなんとかその場を凌ぐ少女がそこにいた。
****
今日は
「うわぁ~、思ったより大きい!」
あの時、敵対者から私たちを逃がすために
なんででしょう——ここ最近の私は当たり前の日常の大半を、非日常に奪われてる状態です。
――でもなぜか、今の方がワクワクしています。
知らなかった事が多すぎて、そして知る事すべてが新しくて――
「テセラ……一つ断っておきますが、この機体を使ったとて——相手が魔法少女であった場合は、ろくな援護が出来ませんからそのつもりで。」
大きな鳥を思わせる機体を見上げていると、背後から厳しくも優しいヤサカニ裏当主さんが声を掛けてきました。
その問いにこんな凄い機体なのにと疑問が浮かんだので、質問しようとして——
「えっ——?でもこれだけ凄そうな兵器なら……。——あっ……。」
自分で口にして、気付いてしまいました。
そう——これは〔兵器〕なんです。
対して魔法少女は正でも反でも人間です。
人道的見地に基づき、決して人に向けてはならない凶器――
「相手がどれ程の使い手でも、人間である以上この
きっと、その当たり前の論理が崩壊したから——
「——少なくとも、あなたならその間違いは犯さないでしょう。今自分が口にした事を自らしっかりと
その考え込む私を、使い魔君が気遣ってくれます。
「テセラ……ボクもいる。力の使い方は一緒に考えながら進もう。」
「ありがと……ローディ君。」
少しの沈黙の後、自分の機体の状況を遠目で確認しながら——ヤサカニ裏当主さんが本題を切り出します。
「ひとまず先の【
その重要な問いを受け、私はあの時の状況を整理しながら返答します。
「はい——私が他の【
返答を聞いた
私たちが【
そうなるなという方が無理な話です。
「……まずいですね……。」
きっと——敵対者と回収任務の
私の中でも、だんだん不安が強くなって来てしまいました。
するとそんな私の心中を察したのか、クサナギの小さな当主様が私の手を引っ張って、半ば強引に施設内部の案内に誘います。
「そんなに考えても状況は良くはなりませんよ?さあ、一緒にこの施設を回りましょ~~☆」
「あ……あの、ちょっと!?クサナギさん??」
手を引っ張りながら、車椅子の少女がレバーによる運転でぐいぐい進んで行きます。
「いいですか?私たちはもうお友達です!これからは
「ふぇぇえええ~~」
その後から、ローディ君もニコニコと着いて来ます。
う~ん、なんだろう?
なのですが、それはそれで失った日常を補完出来てる感じで、それもいいかな?なんて思いに耽りながら――潔く案内に振り回されてしまう私でした。
けど――その時の私はまだ、当たり前の日常に入り込んだ――苛烈なる非日常――の事を予測する事は出来なかったのです。
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