2話ー4 光魔共同危機防衛計画(地球側)
「ではこちらが【
会議の議長を担当するヤサカニ裏門当主
相次ぐ【マス・ドライブ・サーキット】の機能停止を受け、宗家内緊急会議を開催。
組織が擁する東都心中央管制設備――学園、要人施設といった重要建造物が集約される区画。
その沿岸から伸びる巨大な海洋施設へ、宗家を代表する重役が集められた。
集まる会議の場――オフィス然とし100人前後を許容する大会議室へ、【
太陽系全域に送信するための施設――火星~木星間に存在するソシャールコロニー。
通常コロニー全体を通信施設として利用する、広域通信ソシャール【ニベル】と呼称されるそれを経由し――最小のタイムラグによって地球から全宙域への通信が可能とされる。
しかし、【
魔族と言う種を有害である
そのため、惑星【ニュクスD666】軌道に存在する
――が、【
「あちらは現在、【
「すでに魔界は、
会議に収集された【三神守護宗家】当主らを初めとする
『お久しゅうございます、地球の日の本は【三神守護宗家】の方々。』
通信の先に映し出される男性。
女性とも男性とも見て取れるその姿は、宗家の
魔族世界において神と同格とされる男の名は【
その想像を絶する大物から、地球の一組織――長き歴史を持つ防衛の
――だが……メモリ通信の先にいる魔王から発せられる尋常ではない程強力な魔霊力は、多くの
『
『――大変申し訳ない……。』
メモリ通信の先、とてつもない存在――神とも呼ばれる偉大な魔王が、人類に対し頭を下げて謝罪する。
おそらく歴史上始まって以来の大事件であろう。
地上では、長い歴史の最中数え切れぬ程の
己の事しか考えずにあらゆる場所で、力なき物を食い物にする――品も、義も、礼すらも無き愚かなる人類の闇。
だがそこにいた神とも魔王とも呼ばれる存在は、すでに別次元の霊格――礼儀すらも神格領域かと思える程の。
恐らく――その【霊格存在】は地上の誰もが遭遇した事のない、奇跡の存在であると言えよう。
『今地球の方々に対し申し開きのない状態であるが――事は急を要する。……ご容赦願いたい。』
深々と頭を下げていた神なる魔の者が本題に入る。
メモリ通信のため一方的な通信であるが、現在の【
「以上が計画
その言葉に
それもそのはず――現状取れる手段として、輸送に使用する【マス・ドライブ・サーキット】を限定。
そこに現れるであろう魔族の離反者勢力を、地球最大戦力で迎撃――
さらに魔界側で、移送に成功した全ての
そして、その
ジュノー・ヴァルナグス――
すると質問の場であるはずが、反対派
「小娘一人に何が出来る!」
「彼女は魔族だろう……!相手が魔族の離反者なら、
二人目の心なき
一瞬で口を閉ざしたその
「彼女一人に頼らざるを得ないこの状況の中……よくその様な口が叩けますね……!」
身も凍る視線で
魔族の王女の平和を願っていたのは、遠く魔界の姉だけではない。
その一人である、ヤサカニ裏当主の眼前で魔族の少女に対する心無い暴言―― 一撃を見舞われなかっただけでも感謝すべきである。
「でも、一人では流石に危険だと思います。支援が必要では?」
計画に対する会議の中、その場にそぐわぬ小さな少女の声が質問を投げかける。
「それに対しては用意している手があります。加えてあなたにもお任せしようと思っているのですが――異存はありませんね?クサナギ家 裏門当主、クサナギ
クサナギ
【三神守護宗家】を政治や産業を主とする表の顔に対し――軍事や特殊紛争による防衛を主とする部門で国を支える組織形態。
その中において――異例の10代で当主となった彼女は、すでに戦闘技術も内なる器も宗家において並ぶ者が無き逸材である。
「まあ、そうなると予想してましたけど(汗)その件については異存はありません。」
「では現時点での計画通達は以上ですが――事が事です。いつ大きな計画変更が発生するか想定が出来ません。そのためにも海外の各機関にも協力要請を出しています。」
そして――臨時会議は長い道のりの最初の門を閉じた。
****
「叔母様……。」
【三神守護宗家】施設内でベンチに腰掛け、大きく息を吐き出し額を缶コーヒーで冷やす、臨時会議も早々に切り上げたヤサカニ裏当主
一息つく会議議長に声をかけたのは、可愛いクサナギ裏当主
「
会議の場とは違うまるで親しき親類の様相で、やり取りを交わす二人。
沿岸から伸びる施設を一望出来る会議室外―― 一角へ自然を配した憩いの場。
有事に備え
「彼女――
車椅子に乗る当主と言う姿――事の他深い事情を有した少女である。
その慈愛に満ちた車椅子の当主の問いかけに、暖かさを感じるも――返答が言い淀むヤサカニ裏当主。
「……無い……でしょうね。かといって、今可能な手段はメモリ通信のみ――それも魔界側から送られなければいけませんよ?現時点では彼女が
慈愛に満ちたクサナギ表当主の問いかけに、暖かさを感じるも――返答が言い淀む。
小さな当主が気にしている事はヤサカニ裏当主にも想像が付く。
この当主の肉親は遠く月面施設におり――表門当主クサナギ
小さな当主にとって叔父は当然大切であるが、本当の肉親が遠く離れた所――それも星を
優しく――そして大きな器を持つこの少女は、相手が魔族だろうが分け隔てない。
「計画実行までは時間がありますよね?……何とか出来ませんか?」
これはまた無理難題を……。
そう口にしそうになったが、ヤサカニ裏当主は無下には出来なかった。
かく言うこの
しかし、恐らくもう生きて彼らと会う事は出来ない。
彼女のかけがえのない仲間は、地球に対する反逆者として遥か銀河の彼方へ追放されたのだから……。
「――考えてみましょう……。」
しばしの考察の後、
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