第11話 親睦会の翌日のこと

 目覚まし時計が鳴っている。朝が来たのだ。そのことは目覚ましの音で理解できた。止めようと思って、手を伸ばしたが、予想した場所にはなかった。仕方がないので、顔を上げて探す。ベットに顔をつけたままでは見つからない。おそらくベットから転げ落ちたのだろう。体を動かし、ベット上にある顔の位置を崖上となる場所まで移動する。片目でしか見ていないが、目覚まし時計の存在を確認する。手を伸ばし、目覚まし時計の上部のボタンを押し、動作を停止させる。けたたましい音が止み、ようやく室内が静かになる。

「今日は・・・・・・日曜か」

 カレンダを見ながら、言葉を口にする。昨日の親睦会は土曜日に開催した。そのため、その翌日は日曜日だ。基本的に週休2日で、土日は休みとなり、あちらの世界でも作戦行動は休止となるらしい。それ以外にも、祝日という考えを存在し、いくつかの決まった日も休みとなる。ただし、こちらの世界のカレンダと完全にリンクはしていないため、祝日でも女王陛下の誕生日、建国記念日などの日が祝日として設けられている。こういった制度はこちらの世界とコンタクトをとるようになってから知り、導入するようになったらしい。

「変な話だよな・・・・・・」

 関わっていながら、疑問だらけで、今生きている境遇が夢物語のような気がする。早い目に違う仕事を見つけて、今の生活を終わりにしたいと思っている。しかし、今の職はかなりの好待遇だ。転職サイトに載っている求人が少し心もとなく思える。もちろん、もっと上の待遇のところもあるが、自分のキャリアを考えると、とても採用してもらえると思えない。今までのキャリアを生かせる職を探すと、どうしても手取りで30万はいかない。良くて、せいぜい27万くらいだろう。3万円の差が大きい。

「うーん」考えているうちに頭は冴えてきた。しかし、躰をベットから起こす気になれない。

 これで給料だけというなら、さっさと止めるが、雇用保険もある。福利厚生もきちんとどころか、充実している。異世界と言いながら、なぜかこちらの世界に順応した雇用条件がととのっている。意外とちゃんとした会社だなと、ときどき思うが、会社ではない。しかし、これでも表向きは会社を装っているため、会社名が存在するのだ。そして、実は名刺もある。当たり前に一回も使ったことがない。一体、どうなっているんだと、だんだん頭を抱えたくなる。

 もう一眠りしようかと思い、ベットの上にある体を動かし、頭が枕の方を向くように移動している途中で、電話がかかってきた。鳴っているスマホの画面を見ると、知らない電話番号だった。

「誰だ?」知らない電話に出て、ろくな目にあったことがない。そのため、しばらく放っておいたが、電話が止む気配がないので、仕方なしに出ることにした。

「もしもし?どちら様ですか?」

 少し機嫌が悪い様子で出てしまう。相手がわからないので、警戒心をもっていることをアピールしている。

「あ、久利恵ですけど・・・・・・お忙しいですか?」

 彼女の言葉を聞いた瞬間、頭の中は絶対零度の世界になっていた。

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