第8話 親睦の夜がさらにふける
居酒屋に移動したら、ぜひとも聞きたいことがあったので、それについてきいてみることにした。
「お二人とも、本名はなんとおっしゃるんですか?」
発言を聞いて、二人はびっくりしているようだ。本名を聞かれると思っていなかったようだ。そういうやり取りはなしなのか。
「聞かない方が良かったですか?」
「いや、そんなことはない。むしろ、あまり気にしていなかった。でも、よく考えたら、こっちの世界であちらの名前で呼ぶのも変だな」
「そうですよね」
二人は素直に賛成してくれた。拒否されたらどうしようかなどと少し不安に思っていたが、そうはならず、ほっとしている。
「僕の名前は、河野光也といいます。名前を少し変えて、コーツって名乗っています」
周囲からしたら、ネットゲームのオフ会にしか見えないだろう。実際にそういう場に行ったことがないので、よく知らないが、たぶんこんな感じだろう。
「わたしは、後藤修也です」
「響が似ているから、ゴードン?」
「その通り」後藤さんがうなずく。
「ビルさんは?」話を振ると、彼は少し考えてから、
「田中裕也です」と名乗った。
「なんで、ビルっていう名前になったんですか?」
「いや、それは、その、あんまり聞かないで。適当だから」
彼ははぐらかすように言った。本人が言う通り、適当に選んで決めた名前なのかもしれない。
「そうそう、話の続きなんですが、はじめてあっちの世界に行ったとき、最初は女王陛下に謁見したあと、選ばれしものとなった理由とかを言われたんですが、そのあたりの経緯も一緒なんですか?」
「うん、同じだね」後藤さんがビールを少し口に含んだあとに言った。
「そうなんですね。ところで、あの世界にいくまでにどんなことが?」
今度は後藤さんの番だとばかりに話を持ちかけた。彼はもともと話す気だったのか、「いいよ」と言ってから、ビールが入ったジョッキを置いた。
「あんまり長い話も面倒だろうし、手短に話すよ」
「はい、お願いします」
自分以外の人がどんな事情で、あの世界に呼ばれるようになったのかは気になっていた。田中さんの話は聞けなかったが、話せないということから考えると、けっこう悲惨な話なのかもしれない。
「えぇと、そうだな。名前は伏せるが、けっこうな大企業に勤めていたんだ。結婚もしている」
「え、結婚しているんですか?」
「うん、そう」
「奥さんとか、あっちの世界のこととか、なんて言ってるんですか?」
「いや、それをこれから話すんだけど・・・・・・順をおってね」
「あ、すみません」
先走りすぎたが、はじめから衝撃な事実に驚く。年齢を考えれば、あってもおかしくない話だけど、彼の話の続きが気になる。
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