第6話 ここにいたるまでの物語

「いらっしゃいませ。何名様ですか?」

「3人です」

「3名様。わかりました。お部屋を準備いたしますので、少々お待ちください。

「わかりました」

 着いた店はチェーン店のようだが、どういった選択なのだろう。贅沢を言うつもりもないので、特に気にしなかったが。はじめて顔を合わせる人に対してはもうちょっと気を使った方がいいのではないかとここの中で勝手に思う。

「お待たせしました。こちらへどうぞ」

 1分も経たないうちに店員さんがやってきた。店員さんのあとについていく。その間に会話がない。駅前で出会ってから、軽い挨拶は済ませたが、そのあとはお互いにどうすればいいかわからず、そのまま居酒屋まで移動してきた。

「こちらの席でお願いします」

 席の場所を教えてもらい、店員さんはその場をあとにする。それぞれが近い位置の適当な席に座る。

「えぇと。それじゃ、自己紹介でも・・・・・・」

「そのまえに、注文を取りに来るんじゃないですか?」

「あぁ、そっか」

 ゴードンさんの進行で飲み会が始まりそうになったが、そのまえに店員さんがドリンクなどの注文を取りにくると読んでいたが、その通りだった。

「お待たせしました。ご注文おうかがいします」

「とりあえず、生ビール3人分・・・・・・で、いいですか?」

「それで大丈夫です」ゴードンさんが答える。

「あ、こっちも大丈夫です」今回の飲み会参加者3人目のビルさんも答える。

「あと、食べ物もいいですか?」面倒なので、続けざまに注文する。

「はい、どうぞ」手際よく店員さんが端末を操作して、注文を受けていく。

 3人それぞれが適当なものを注文する。それを順番に店員さんがオーダに通していく。

「以上で注文はよろしいですか?」

「はい、大丈夫です」代表として答える。

「わかりました。それでは、少々お待ちください」

 店員さんが去っていくと、黙っていたゴードンさんが口を開く。

「わ、悪いね。なんだか手際よくやってもらって」

「いいですよ。日頃お世話になっていますし。それに今日はゴードンさんの奢りですし」

「え、そうなんですか」ビルさんが嬉しそうに反応するが、

「きみは違うよ」と冷静にゴードンさんが否定する。

「え、ずるい」

「いやぁ、まぁ、いろいろとありまして」

「2人の間でなにかありました?」

「えぇと、言っていいんですか?」

「いいよ。このメンバだし」ゴードンから許可が下りる。

「なにがあったの?」

「昨日、僕が作戦を提案したんです。でも、ゴードンさんがそれを自分の案として使ったんですよ」

「あ、そうなの?だからか、ちょっと変わってるなって思った。だって、ほら、ゴードンさんの作戦としては、地形とか利用するって珍しいじゃない?」

「そうなんですか?」

「うん、まぁ、そこまで気が回らないというか・・・・・・勉強になった」

 まだなにも飲んでいないが、話が少し盛り上がり始めたところで、店員さんがビールを3人分持って来た。

「お待たせしました。生ビールです」

「あ、どうも」店員さんから受け取り、それぞれに配る。

 全員がビールの入ったコップを持っていることを確認する。

「それじゃ、昨日の勝利と我々のこれからの友情を祝して、乾杯!」

 仕事と言っていいかわからないが、親睦会が始まった。

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