第5話 選ばれしものたちの鼎談

 昨日の見事な作戦成功のせいもあってか、今日の快晴が気持ちの良いものに思える。雨のせいで、近くにあった湖の水面の高さが上がったので、そこに誘い込んで填めてしまおうという発想を提案したのだが、これがうまくいった。作戦開始直前にいい具合に雨が降ったのが幸いだった。これは運がいいとしかいいようがないが、「運も味方にできるのが一流の策略家だ」と彼は言っていた。提案したのは誰だったか、記憶の中に残っていなかったのかもしれない。

 駅前に向かっている途中だ。昨日は元の世界に戻ってからは、ずいぶん疲れていたようで、オフィスで少し眠ってしまった。起きたら、躰に毛布をかけられていた。久利恵さんがかけてくれたのだと思い、お礼を言うと、「総務」の方だと聞いて、がっかりした。聞かずに心の中に閉まって、思い出にしておけば良かったと後悔した。

「たしか、この駅だったはず・・・・・・」

 自信なさげに言っているが、それも仕方がない。この駅のことを知らない。ゴードンさんが指定した駅なので、この駅に来ること自体が初めてだ。目印のようなものを教えてもらっていたが、それがすぐに見つからない。

「あ、あれか」

 大きな仏像のモニュメントが改札すぐ近くにあると聞いていたので、そのすぐ下に移動する。こんなところにいて、会えるのかは心配だが、きっと彼の方が見つけてくれるだろう。聞いたところによると、彼が住んでいる場所の近くらしい。飯を奢る代わりに、駅前までは来てくれとのことだったので、そこは従った。なにを食べさせてくれるかは聞いていないが、それなりに期待している。

 時計を見るが、到着が少し早かったようで、約束の時間より15分程度まえの時間だ。イヤホンをつけて、音楽を聞いているので、待っている間は暇ではない。その分お気に入りのアーティストの音楽が耳元に流れているので、途中で邪魔されると少し嫌だ。

「あのぅ・・・・・・」

 声をかけられ、振り向く。そこには大きな躰の男性がいた。見た目は普通のおじさんというか、真面目な印象しか残って無さそうな人だ。チェック柄のシャツで、ズボンはジーンズとは、地味な印象しか残らない。

「は、はい」緊張しながら、返事をすると、

「コーツ・・・・・・さんですか?」と聞かれ、うなずいてしまう。

 こんな会話をしていると、なんだかネットゲームのオフ会のように思えるが、一応違う。それよりも、彼がゴードンさんなのか、見た目だけで判断できない。

なにしろ、印象が全然違う。髭もない。

「ゴ、ゴードンさん?」

「えぇ、そうです」彼はうなずきながら言った。

「全然違いますね。向こうの世界と・・・・・・」

「そ、そうかな」頭を掻きながら、照れている様子だ。

 元の世界と向こうの世界でこんなにイメージが変わると想像していなかった。

「じゃあ、行きましょうか?」

 納得のできる答えが出ないまま、ゴードンさんに連れられ、飲み屋に移動する。

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