第4話 扉の向こうにある物語

 目が覚めると、そこは城の中だった。いつもの場所だったので、ほっとしている。違う場所に飛ばされたら、どうしようかと不安になるときがある。1度もそんな経験をしたことはないが、なにごとにもイレギュラはある。

「やっと来たか」

 躰が大きく、見事な髭を生やした男性がこちらに向かってくる。上司だが、とてもフランクな雰囲気があり、同時に威厳もある。尊敬できる上司とは、こういう人を言うのだと、はじめて会ったときに理解した。以前の職場の上司と比べること自体が馬鹿らしい。

「すみません、遅かったですか?」

「いや、俺がいつもより早く着いただけだ。気にしなくていい。ただ待ちくたびれた」

「それは僕の責任ではないですね」

「いや、お前の責任だ」

「なにを根拠に?」

「お前のくだらない話の続きが気になって仕方がない。くだらないのはいいが、先があるのに、話を途切れたままにしているのが、気に入らない。どうにかしてくれ」

「あぁ、あの話ですか?」

 昨日の戦闘前に話をした、子供のころに体験した、とてもくだらないが、一度は聞いてみたくなる話があるのだ。これは十八番でいろんな人に話をした。3ヶ月経ったということもあり、すっかりこの世界に慣れたことを記念して、彼に少し話をした。話をしたのはいいが、途中で魔物が予定より早くポイントにあらわれたので、話が途中になったのだ。でも、あの話の続きを今からする余裕はちょっとない気がする。

「あとでいいですか?今から話しても終わらないと思います」

「そんなに先があるのか?」

「ありますよ。意外と話が長いんですよ。下らないわりには」

「そうか・・・・・・ちょっと考える」

 少し残念そうだが、仕事を優先させることになりそうだ。

「ところで、コーツ。今日の作戦はもう頭の中に入っているか?」

「はい、大丈夫です」

 空気が急に変わり、今日の作戦の話になった。こちらも緊張感を持って、話に臨む。

「予定通りに遂行できるかは天候次第だと思う。うまくいかなった場合も考えておく必要があるな」

「プランBはないんですか?」

「まだいい作戦が思いついていない。お前、何か案はないか?」

「ありますよ」

 今日は珍しく、頭が冴えており、意外と面白い作戦が思いついていた。

「本当か?ぜひ聞きたい」

「わかりました」

 そのまま2人で立ち話を続ける。簡単な説明しかしなかったが、彼はすぐに理解してくれた。

「なるほど。そうやって追い込むのか・・・・・・」

「どうでしょうか?」

「いや。いいと思う。この案でいこう」

「大丈夫でしょうか?」

「大丈夫だ。問題ない」

「ゴードンさんのメンツ的に問題ないでしょうか?」

「え?」彼は一瞬だけ固まり、少し考えてから答えた。

「大丈夫だ。問題はない」

「どうしてですか?僕の作戦が採用されると、ゴードンさんのメンツが・・・・・・」

「俺の案ということにするから大丈夫だ。そうした方が話がスムーズに進むだろ?大丈夫。ちゃんとお礼はするから。そうだな、今度飯でも奢らせてくれ」

「あ、はい」釈然としないが、話としてはそう進ませるのも仕方ないかと思いつつ、了承すると、彼の話は終わりではなかった。

「飯の件だが、元の世界に戻ってからの話でどうだ?一度みんなで集まって、直接顔を合わしたいと思っていたんだ」

 思わず彼の方を振り返ってしまったが、真剣そうな面持ちだった。それについては、以前から興味があったので、その場で賛成の意志を示した。

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