第19話 戦士のシナスタシア
時間はそれなりに過ぎたが、展開自体はそこまで進んでいないみたいだ。破壊活動を続ける2体の怪獣の前に、光の球が現れる。
一際眩しい輝きと共に、光の球は見る見る居並ぶ建物を易々と超える巨大な人の形へと変わっていく。
『コタロー……あれは一体……』
さっきから食い入るようにテレビを見ているベルが俺に訊ねる。
「まぁ見てなって」
うっすらとした人型の光は、やがて実体を伴っていき、銀色を基調としたヒーロー・ハイパーマンオメガへと変貌する。
最近のハイパーマンは昔よりも色が多いのね。俺が見てた頃は赤と銀色だけだったけど、今は青色とかも混ざっているし、なんか時代を感じる。
颯爽と現れたオメガは、2体1の不利をものともせず果敢に戦う。数の有利こそあれど怪獣達は統制の無い1と1。
戦力はプラスになってもそれ以上にはなりえない。どうやらそれでは期待の新ヒーローには遠く及ばないようだ。
連携とは程遠い波状攻撃を容易く避けながら、雄々しく、それでいて優雅に舞いながら反撃する。
情勢の不利を本能で悟ったのか、プテラノドンのような怪獣は空を飛んでオメガの攻撃圏内から離脱を試みる。
しかし、ハイパーマンにその程度の小細工など通じるはずも無い。 翼は持たずとも空を自由に飛び、オメガはすぐさま空を飛ぶ怪獣を捉える。
怪獣は目からビームを出すものの、ことごとく宙を過ぎるだけでオメガには当たらない。オメガの方も腕をそろえて構える。
派手な演出と共に光線を繰り出して、一撃の元に怪獣を葬り去る。 すかさず反転、今度は地上のティラノサウルスのような怪獣を相手取る。
しかし状況は一変。ティラノサウルスのような怪獣は逃げ後れた人の残っている建物の側にいる。
その建物に攻撃は行っていない。だが、やろうと思えばいつでも出来る。
つまりはオメガに対する人質――盾として利用しているに違いない。
オメガが街の人を守る為に戦っている事に気付くと同時にすぐさま人質を取る……その荒々しい見た目からは想像も出来ない程の知性と狡猾さだ。
卑怯千万と言いたい所だが、効果がてきめんなのも事実だ。
2対1の不利をモノともしなかったオメガの快進撃がピタリと止む。その隙を突いて、怪獣は口からビームを出して、宙を飛ぶオメガを撃ち落す。追い討ちも抜かりなく、地に倒れるオメガを怪獣は踏み付ける。
重量感たっぷりの足に何度も踏みつけられたとあれば、流石のオメガも余裕とはいかないようだ。踏みつけられる度に苦しむオメガがアップで映し出されている。
これはちょっとこの後の展開がどうなるか分からない。と言うか1話目とは思えない程飛ばした内容だな。かなり攻めて来てるぞ。続きが気になるところだが、ここでED。今週の放送分は終わりか。
どうやら結末は次回に持ち越しのようだ。んー……物凄くもやもやするわ。あの続きがどうなるのか気にならないと言えば嘘になるぞ。
『これで終わりなのか? あの、怪獣と言う存在と戦っていた戦士はどうなるのだ?』
あれ? 予想以上にベル君が食いついてきましたよ?
「さ、さぁ……? 来週を待ってとしか言いようが無いけど」
『来週だと? それまで彼は戦い続けるというのか? その間の食事や睡眠はどのように行うのだ? 生命活動に支障は無いというのか?』
「いや……え? う、うん? 多分大丈夫なんじゃないかな? なんたってヒーローだしさぁ?」
『驚愕すべき継戦能力だ……ヒーローとは凄まじい存在だな……敬服に値する。それに、彼には、そうだな……親近感、とでも言うのだろうか? とても他者とは思えないものを感じる』
……何ともコメントしがたい。
まぁ、馬鹿でかい怪物と戦っている者同士なんだ、何かしらシンパシーを感じるところがあるのだろう、うん。
『特撮と言ったか。このような素晴らしいものが存在するとは。――シエルがこの星の文化に傾倒するのも無理は無い話なのかもしれないな』
「何? そんなにこっちの文化は珍しいもんなの?」
『珍しい、と言うよりは想像すらできなかったと言った方が適当だろう。我々の世界ではこの世界ほどの娯楽的な文化は無いからな」
「そうなん? 俺からすればなんか技術力的にそっちの方がすごい娯楽持ってそうな気がするんだけどね?」
俺の言葉に、そんな事は無いと言いたげな雰囲気でベルは首を横に振る。
『実の所、地球を最初に発見した者が現地調査で、ふぁみゅこんと言う品を持ち帰ったのだが――』
ふぁみゅこんって……レトロすぎるだろ……俺が生まれる前の代物ですよ?
『それを解析して我々の星でも扱えるようにして、何人かがテスト運用をしたみたところ、全員夢中になってやりこみ、医療施設に送られた者も出たほどの評判だった』
「そんなに……?」
ベル達の住んでる世界ってどんな感じなんだろう……今更ながらに気になってきた。
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