第3章 地球の鼓動は愛
第17話 巨大ロボのいる日常
新しい朝の始まり。まずは活力の元となる飯作りだ 。
ひとまず冷蔵庫を確認。 まぁ、それなりに材料が揃ってはいるが、そうだな、ひとまずは玉子焼きと……後は、鮭があるな。
よし、メニューは決まった。腹も減ってる事だし、サクッと作りますか。
「んっ……んん……ふわぁ……」
調理に取りかかろうとした所で、シエルが半分くらい寝ぼけてる感じで2階からおりてくる。
「んっ……ふわぁ……おは……ようございます……」
寝巻きの上はボタンが全部取れて半脱げ、ズボンはズルズルに引きずって、ノソノソ歩いてくる。
仮にも女の子で、これは無い。流石にこれはだらしがなさ過ぎる。
「あぁーもう、顔洗ってしゃきっとしてこい!」
「んっ……ふぁ……い……」
ちゃんと聞いていたのかどうかもわからん感じで、ゆったりとシエルは洗面所へ向かう。
……まぁ一応聞いてはいたのだろう
シエルが顔を洗いに行ってる内に、朝食が完成した。
出来上がった朝食をリビングのテーブルに並べて椅子に座る。
「わぁ! いい匂いですね!」
洗面所からシエルが帰還。ひとまず身だしなみはなんとかなっている。
「この白いの、なんでしょう?」
茶碗を手に取り、シエルが訊ねてくる。
「米だけど……知らない?」
「初見ですね。この黄色いのはなんでしょう?」
「玉子焼きだけど……もしかして、これも見たこと無い?」
シエルは首を縦に振って答える。
「じゃあこれ、鮭も初めて?」
「ですね。どれも、私の星には無いものですので……どうやって食べればよろしいのでしょうか?」
これは驚きだな……こうも食文化が違うとは。パッと見シエルは普通の女の子だけど、実際のところは数百万光年も離れた星の住人だって事を再確認したぜ。
「まぁとりあえず、食ってみ?」
俺に促されて、シエルは手元にあった箸を逆手に持つ。
「あーそうじゃない、こう持つ」
シエルに使い方を見せるために、俺は自分の玉子焼きを箸で裂いて摘んでみせる。シエルも俺の動きを真似て、慣れない手つきで箸で玉子焼きを裂いて、落しそうになりつつも摘んで口まで持っていく。
「おいしい……ですね! この玉子焼きと言う食べ物!」
余程口に合ったのか、次々と玉子焼きを口に運ぶシエル。
箸捌きも次第に手馴れていって、焼き鮭に手を付ける頃にはすっかりいっぱしに扱えるようになっていた。
「この、鮭も美味ですね! んー、良いですねぇ地球は! こんなに美味しい食べ物がたくさんあるなんて!」
まさか、そこのスーパーで90円で置いてた鮭の切り身で、そこまで喜んでもらえるとは……まぁ、作り甲斐はあるっちゃあるんだが。
『シエル』
突如、リビングにベルの声が響き渡る。
シエルがズボンのポケットから端末みたいな物を取り出す、ベルの声はそこから出ているみたいだ。
『付近に界獣が出現した。至急応戦する必要がある』
またかよ!? 昨日も一昨日にも出たばっかじゃん!
何? 今はあれか、界獣のバーゲンセールでもやってるわけ?
「でも、ごはんがまだ……」
シエルが食べかけのオカズをチラチラ見ながらごねる。
『当然後回しだ。今は宇宙界獣の撃退が最優先される』
――まぁ、そうなるな。
それでもシエルはベルの言葉に反論したげだったが、結局何も言う事は無く、重たい動作で机から離れる。
「……片付けないで残しておくから、さっさと倒して来い」
「本当ですか!」
「本当だから……帰ったら温め直すから……」
俺の言葉を聞いた途端、シエルの動作は急激に軽やかなものへ変わり、家の外で待機しているベルの元へステップでも踏みそうな雰囲気で向かう。
……その間も、隙を縫っては飯の置いてあるテーブルを見ていたな。
「ちょっと! 美作さん!」
玄関から怒鳴り声が聞こえる。となり家のおばちゃんの声だな。
何事かと玄関まで話を聞きに足を運ぶと不機嫌オーラなおばちゃんの姿が確認できた。
「あのでっかいのなんなのよ! 洗濯物が乾かなくて困ります!」
あー……あのでっかいのって、もしかしなくてもベルの事ですよね。
「趣味の工作も結構ですけどね、日陰でウチは迷惑しているのよ」
趣味の工作……なわけないんだけどなぁ。
しかし、ベルの居場所か……家の庭に間に合わせで置くのも限界がきているな。どうしたものか。
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