第11話 スーパーロボの話
「オォオオオオオ!? オッ!? オオオオッ!? オマ……なんでここに!?」
ロボットに声をかけるが、やはりと言うか特に反応はない。
「シエェェエェェルッ! これはどういう事だぁぁ! 説明! 説明して!」
しかし、ここで一つ重大な問題が。
「あいつとどうやって連絡するのおぉぉ!?」
致命的なミステイク。外出したシエルとの連絡方法を確保していなかった。
「ちょっと、シエルさん! 今どこなの!? 帰ってきてくださいよ! 暗くなる前と言わず今すぐにさぁ!」
俺はこの町のどこかにいるであろうシエルに届くようにと力の限り窓辺で声を張り上げる。勿論、シエルに俺の声が届く事はなかった。
どうすんのこれ!? 家の下には人だかりできてるし、あの人たちになんて言えばいいの!?
「コタロー!」
人だかりの中から、よく見知った人間が俺に声をかけてきた。
「マツリチャーン! 俺の事心配して来てくれたのぉ?」
「馬鹿言ってないで。いいから降りてきなさい! これどう言う事なの!」
そんなん俺が聞きたいよ……マジなんなんすかこれ……?
そうぼやきたい所だか、口には出さずに我慢して、俺は茉莉の言うがままに家の外に出た。
「で……これは一体どう言う事なの? なんでこのロボがアンタの家にあるわけ?」
家の前にいる野次馬を代表するかのように茉莉が俺に問い掛けてくる。
「な、なんでだろうね……」
もう本当に、そう申し上げる他ないですよ。だって、なんでここに巨大ロボットがいるのか、一番聞きたいのはこの俺自身だし。
巨大ロボットは俺の家の庭で物凄く窮屈そうに体育座りしている。
ウチの庭は結構な敷地を誇るけど、それでも20mを超える体躯のロボットにはせまっ苦しいもののようで、限界まで身を縮めているのにも関わらず壁や塀と体がぶつかりそうになっている。
昨日の化け物との戦いぶりを知っている為に、このどこか哀愁さえ感じるロボットの状況には複雑な心境になる。
「誰がこれをアンタの家に運んだのよ?」
それは……どう考えてもシエルしかいない。しかし、シエルは今いないしなぁ。
「まいったな……この状況をどう説明したものか……」
皆には聞こえないように、そうぼやく。
『――すまない。随分と迷惑をかけているようだ』
「うーん、まぁ迷惑って言うか、困惑って言うか……なんでここにロボットがいるのか、ちょっとわからないなーって」
『私が自らここに位置したのだよ。君の厄介になるとは思ったが、他に身の置き場が無かったものでね』
「あぁ、成程。そう言う事だったのね」
――ん? どう言う事だ?
軽く相槌を返したものの、よく考えると私が自らって言葉はおかしい。それに、身の置き場が無いって……どう言う事だ?
つーか、俺は誰と話しているんだ?
「シャ……シャ……」
茉莉が何かを喋りたげにしているが言葉に詰まっている。明朗な茉莉にしては珍しいな。
「シャ……何? ノースリーブでサングラスしてるあのキャラ?」
「違うわよ! 喋ったの! 今! あれが!」
そう言いながら茉莉は指と視線で「あれ」を示す。
茉莉が示した物はロボットのわけだが。
『驚かせてしまって申し訳ない』
「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!」
ロボットが! しゃべって! にほんごしゃべって! いますであります!?
「お、おぉおおおおおちっ、落ち着きなさいよコタロー! まだ慌てる時間じゃないわよ!」
「おかしくない! ロボットがしゃべってもおかしくないから俺は慌てないよ!」
『……これは2人が冷静になるまで待つしか無いようだ』
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巨大ロボットが喋り始めてから早十数分、俺も茉莉もなんとか、状況を呑み込む事が出来た。 俺ん家の前にいた他の野次馬は、一人残らずどっかに逃げてしまった為、今この場にいるは俺と茉莉、そしてこのロボットの2人と……一機? だけだ。
『ひとまず、私に君達を襲う意志は無い。それは了承して貰えるかな?』
「「は、はい……」」
俺と茉莉は口を揃えて返事をし、首を縦に振るという所作までもぴったりと同時にしてみせる。
『まずは名乗ろう。私はヴァルジオン、名はベルグレイアスだ』
「ヴァルジオン……?」
聞きなれない言葉に頭の中で疑問符が浮かび上がる。
『この世界の言葉で言うと……そうだな、『自律稼動自律思考型対宇宙界獣用人型汎用決戦ロボット』と言った存在だ』
物凄く長い肩書きですね!? 「型」と「用」もやけに多いし!?
「えっと、ベルレ、あれ? ベリグ……」
『……ベルグレイアスだ。言いにくいようならば『ベル』と呼んでくれて構わない』
「じゃあベルで、さっき自分でここに来たって言ってたな」
『私のパートナーがこの家に宿泊する事になったのならば、私も近くで待機するべきだと、そう判断した』
「……そう言う事だったのか」
「パートナーって、昨日のあの子?」
茉莉が俺の腕をチョイチョイ突きながら聞いてくる。
「そそ、今は出かけてるけど」
「あの子……ベルの中からでてきたよね?」
そうだな……昨日シエルはベルの中から……あ、そうだ。
「そういえばベルの中は、人が入れるんだよな? 俺、中がどんな風になってるのか気になる!」
『私の中が気になる?』
「なるなる、めっちゃ気になる! つーか乗せて欲しい!」
巨大ロボットに乗る。それは全国の少年が物心付いた頃から抱き、そして叶う事のなかった夢だ。
今俺の目の前にいるベルは、架空ではなく現実に存在している巨大ロボット。であれば中がどうなっているか知りたい、遙か遠くに抱いた夢を叶えたいと思うのは健全男子として当然の事だ。
『申し訳ないが……部外者を無闇に乗せる事はできない』
「そこをなんとか頼みますよ、神様仏様ベル様! ほら、茉莉も興味あるだろ?」
「私はそんなに興味は無いわよ」
きっぱりはっきり、そしてサバサバと、茉莉は全国の男の子の夢を一刀両断にして否定する。
「そんな事言わないで一緒に乗ってみようよー。楽しいよきっと? ね?」
俺は茉莉のポニーテールを指に巻きつけつつ説得を試みる。
「わかった、わかったから! 髪の毛指に巻きつけるの止めなさい!」
「うっし、決まり! な、ベルも頼むよ! ちょっとだけ、ほんの少し中に入れてくれるだけでいいからさ!」
『困ったな……そう易々と承諾するわけにはいかないのだが……』
ベルの反応は中々に渋い物だった。
表情こそ無いが、恐らく人間なら眉間にしわを寄せている、そんな感じの雰囲気は感じる事が出来る。
『いいだろう。本来、必要無く一般人に私の内部を見せるわけにはいかないのだが……君には厄介をかけた事だし、そこまで望むのならば今回は特別に少しだけ中を見せよう』
暫く悩ましげにしていたベルだが、俺達がコクピットの中を見ることを渋々ではあるものの承諾してくれた。
ベルは体育座りの姿勢を変えようと動き出す。
何分、体が敷地内にぎりぎり収まっている状態だから、少しでも身動きすると家の壁やら屋根やらにぶつかりそうで内心ハラハラしたが、器用に体を動かして、結局どこにも体をぶつける事無く片膝付きの体制になった。
『では私の手の上に乗ってくれ』
そう言ってベルは右手を俺達の近くに差し出す。俺と茉莉は促されるがままにベルの手の上に乗る。
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