第5話 進撃は破壊音と共に



店を出ると、そこは悲鳴と絶叫があちこちから飛び交う修羅場だった。

目の前の人によって形成されたその群れは、さながらテレビの動物番組で見る、

 一匹の肉食動物から逃げる草食動物の群れをそっくりそのまま連想させる。

全く歯の立たない、圧倒的な脅威を前にした時は、人間も動物もさして取る行動は変わらないって事か。


 達匡が俺を先導するように、先を行く。


「じゃきぃぃぃぃぃぃいぃ!」


 おぞましい化け物が、思わず耳を覆いたくなるような奇声を上げて破壊活動を続けている。


 電柱や乗り捨てられた車を、触手で持ち上げ、

 赤ん坊が玩具を叩きつけるみたいに、何度も地面に打ち付けて粉々にしている。

不幸中の幸いか、化け物が手にする物はどれも無人の物で、

 人的被害はまだ出ていないようだ。


 「とにかく安全な場所まで逃げるぞ」


 先んじて動く達匡に、俺もガクも遅れないようについて行く。


 「つーかよぉ! あの馬鹿デカイのなんなんだよ!」

 

 ガクの叫びに、達匡が冷静に返す。

 

 「なんだっていい。アレがマトモな生き物じゃないのだけは間違い無さそうだ。余計な事を考えてる暇があるなら走れ」

 

 とにかく走って、走って、安全なところへ。今はそれしか方法が無い 


 「おい、あいつの向かう先、あれ俺達の学校じゃねぇか!」


 ガクの言葉に背筋が冷える。


 「学校。たしかまだ茉莉が……」

 

 担任に何か頼まれている事があるって言ってたから、まだ学校に残っているはず。


 茉莉のスマホに電話する。返事は返ってこない。


 「クソっ! 達匡、ガク! 俺学校いくわ!」


 達匡とガクが呼び止めるが、逃げる人の群れに流されて離れ離れになる。

 それでも俺は茉莉の無事を確かめるために、学校へと走る。


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