第3話 痕跡は日常の表面に

学校に到着して、教室に入ると、何やら騒がしい雰囲気だ。

一体何を話題に、こんな盛り上がりを見せているんだ?

 

 「よぉ! コタロー!」


聞き慣れた声が俺の名前を呼ぶ。

 

幸村ゆきむらがく――いわゆる腐れ縁って間柄だ。


 「おー。どったのガク?」

 

「聞いたか、でっかい化け物が出たって話」


その一言に、俺の全身を雷に打たれたかのような衝撃が走る。


「と、唐突だな。つーかなにそれ。映画の撮影の話?」


「なんでも凛華山の方で何かが落ちて行ったのを見た人がいて、それが木よりもでっかい変な化け物みたいだったらしいんだよ。今SNSでも凛華市に謎の巨大生物現る! みたいな感じで大盛り上がりだぜ?」


その話を聞いた途端、心臓の鼓動が早くなった。

そんな気はさらさら無いんだろうが、ガクの話は俺にとっては、まるで禍言のように響く


「それかお祭り騒ぎが好きな奴が、大げさに言っているだけとか、そんな感じだろ?」


 ガクの話を聞いていたもう一人の腐れ縁、雑賀さいが達匡たつまさが、冷静に反論をする。


 だが、ガクは指を振りながら達匡の反論に異を唱える。


「なんでも山の中腹辺り……そう湖の辺りなんだけど。

辺りの木が薙ぎ倒されていてさ。警察が原因を調査してるそうだぜ」


ガクは尚も続けようとしていたが、始業を告げるチャイムが鳴る。

すぐに担任が教室に入ったため、続きは話せずじまい。 


だが、ガクの話は俺の心を掻き乱すのには十分過ぎる。

 

 しかし、しかしだ。あの化け物はもういない。

 俺の見た光景に間違いが無いのであれば、もう奴はいない。


 不安はあるが、あまり深く考えるのは良そう。

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