第2話 夢幻か、それとも現か
一夜明けて、俺は学校に向かう途中だ。
歩きなれた通学路をいつも通りの足取りで歩く。
少し前までは桜の木から落ちたピンク色の花びらが、道路一面に散りばめられて
いたが、今はもうきれいさっぱり無くなっている。
もう春も終わりだな、と。
普段ならそんな事でも考えているんだろうが、今の俺の思考は昨日の出来事についてで一杯だった。
昨日のあのでかい化け物とロボット。
あれは俺が見た夢での出来事を、現実のものとして誤認しただけなのだろうか?
だが、あの時感じた戦慄。あれが果たして夢だったとは思えない。
あのどうしようもない恐怖。背筋が凍りつくような絶望感は確かに現実の物として認識していたはずだ。
白昼夢と言う奴があるにはあるが。
「やっぱ夢じゃないよなぁ……」
「何が夢じゃないって?」
俺の独り言を聞いていた女の子が声をかけてくる。
「家に行ったら、もう出かけた後だったし、一人で歩いて何考えていたのよ?」
「や、別になんでも」
俺の横に並んで歩いている茉莉にそう返事を返す。
――まあ、馬鹿正直に化け物とロボットの話なんて出来るはずも無く。
とりあえずこの場は適当にはぐらかしておく。
「なんか私に隠してない?」
茉莉が俺の顔を窺うように覗き込んでいる。
「ソンナコトナイヨ。ボクケッペキ。マツリチャンキョウモカワイイヨ」
リボンで綺麗に束ねられた茉莉の黒髪ポニーテールを自分の指にクルクルと巻きつける。
「茶化さないで」
やっぱ駄目でした。
強引に誤魔化そうとしたけど、茉莉の疑念の眼差しが解かれる事は無かった。
「ふぅ……やっぱ茉莉に隠し事は出来ないな……」
「やっぱりなんかあるのね」
茉莉がちょっと心配そうに聞いてくる。猜疑の瞳から一転した気遣わしい雰囲気の瞳が胸に痛い。
「いいか? これから話す事は決して他言しないで欲しい事なんだが――」
そう前置きをして、俺は回りに聞こえないように注意を払いながら、
神妙に俺の言葉を待っている茉莉にだけ聞こえるように、そっと囁く。
「実は、昨日ハイパーマンの怪獣みたいな、馬鹿デカい怪物に襲われて、
で、ヤベェと思ったら巨大ロボットがきて――」
「何バカな事を言ってるのよ?」
茉莉が眉をひそめて、心底呆れた感じの冷ややかな視線を俺に向ける。
ホラね! こうなると思った! だから嫌だったんだよ!
「心配して損したわ。ホラ、遅刻しないように行くわよ」
そう言って俺の前を歩く茉莉。
まぁ、話は反らせた。とりあえずはこれでいいだろう……?
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