昼
それからはクラスの皆が皆手伝い合って教室の机と
「今このクラスでは内山君の
「毎回毎回お前らには言ってやってるが……人狼ゲームを始めるに当たって、GMとしてこれだけは
GMの内山は
「GMである俺のゲーム進行を、
ゲームの円滑な進行を妨げる様な、
クトゥルフの
だが、GM内山賢次は身を乗り出して、
ールールは全力で守る物。
ーゲームは心から楽しむ物。
ーそして、勝負はしっかりと勝ちに行く物。
ーそれが
「そして、GMの俺は、参加者のお前ら全員がそれを
内山が胸に手を当てて誓いを立てると、本当に
「
「GMの時だけで、テストは赤点。運動も
「言うなし呂模ぉー!!!」教室がどっと笑い転げた。
「……コホン。時間が
帰国子女さん事朱美さんも他の参加者も、人狼ゲーム事『
使うのは『タブラの
「ウホッ! 帰国子女と俺が恋人同士に成れる可能性も微レ存……」牛尾が私を見ながらそうコメントした。その
「第三陣営であるハムスター人間事、
……聞いてるか? 羊子?」
「一人勝ちは嬉しいけど、そう言うのサッムいから。早く始めろよウチヤマダ」
「ユーモアと言う
羊子の冷たい返しに内山もギャラリーも
「自分の役職については村人陣営も人狼陣営も、第三陣営の妖狐も、
さっき配った役職カードも、基本的にはGMの俺以外には、絶対に他の奴等に公開するな。自分の椅子の下に皆、分からない様に
後は、今回は『
そして、死んだ奴のカード自体はラストまで
では……とGMが教室の中央に
「夜が
……おら羊子、しれっと
「人狼は目を開けて下さい。GMに役職カードを提示し、今晩、誰を襲撃するか
GMの合図により、人狼役が目を覚ましてカードを
「占い師は目を開けて下さい。GMに役職カードを提示後、今晩、誰について占いを行うか指定して下さい。占いが終わりましたら、再び眠りについて下さい」
GMが次の指示を出して直ぐに、ギャラリー達が「あっ……」と声を
「騎士は目を開けて下さい。GMにカードを提示し、今晩、誰を
騎士役が護衛先を指定したらしい瞬間も、ギャラリーから「あ~あ……」何て溜め息が、暗闇の中で聞こえて来ていた。
その後、フリーメイソン役の能力処理が終わり……夜が、明けた。
「夜が明けました。牛尾さんが
瞼を上げると、牛尾がGMに肩を叩かれて、
「えっ……、おっ、俺ぇ!?
「不味くなんかねえよ。人狼の襲撃が成功した。そして騎士の
「俺、占い師なのに! 折角人狼を初回ツモったのに……!!」
「因みに仮に占い師が初日襲撃を受けたら、そいつは占い結果を
「そこを何とか……! オナシャス! センセーシャス!!」
「遺言はそこまでだな? 死人は黙ってくたばりやがれ。それとも、お前の好きなホモビ俳優みてーに、ケツに
「……スンマセン大人しく死んでますスンマセン。生まれて来てスンマセン……」
GMの
「占い師が
「これは分からなく成って来たな……」
思わぬ
「ちょっと待って! 信じらんない! 占い師が居ないのに人狼何てクソゲーじゃん!? 誰よ最初からいきなり夜にしよう何て言い出した大馬鹿は!? マッジ最悪何だけど!?」
「お前だよ羊子……」呂模が私の心の声を代弁してくれた。と言うか多分参加者もギャラリーも皆思ったはずだ。
そして私は一方で、占い師の
「さて……昼間に成りました。これから
尚、プレイヤーは昼の間は死亡者やギャラリー、GMとの会話は禁止です。GMの俺には、ルール上の
「以上、開始!」そうGMが宣言した途端、さっきからヒステリックに成っていた羊子が、私を睨み付けた。
「皆! 犬美さんを処刑しようよ! コイツ絶対人狼だよ!!」
皆の反応は静かだった。私も別に
「その意見の
「だってコイツ犬美だよ!? 絶対人狼に決まってるわよ!」
「
「うるさい! その
「嫌、お前も朱美さんを
「まずはこのゲームのセオリー通りに……」
「皆の役職、カミングアウト! でござるな? 呂模君」
「その通りだ、稲荷」
カミングアウト。その言葉を聞いて、やっと羊子が大人しくなった。少しは。
「じゃあ先ずは俺から。俺の役職は
「呂模は私とフリーメイソンだからね! リアル恋人だからね! そうよね呂模!?」
「お、おう……」
羊子の
「皆さん。羊子さんと呂模さんはフリーメイソン
「は、ハアァ!? 犬美あんた、何を根拠にそんな事言って……!?」
「根拠が無いのは羊子さんの主張の方です。私には論拠が有ります」
「何よその論拠って!? 言ってみなさいよ!?」
「俺も気になるな、朱美さんの論拠とやら」
「稲荷も気に成るー!」
皆の
「最初の夜の各役職の能力処理時間の中で、フリーメイソンの処理時間だけが、
「えっ……」
羊子と一部のギャラリーが
「夜の間の各役職カードの能力処理手順は、GMが役職に目覚める様に指示し、各役職が目を覚ました後、自分の
なのに、私が暗に数えた所、GMはフリーメイソン役に六秒しか能力処理時間を
「確かに短かったよね……」
稲荷が私の意見に賛同する。ギャラリー達も感嘆している様子を見るに、同意見の様だ。
「うっ、ウチヤマダー!?」
「てへペロ」GMは自分の席で、アインシュタインの
「GMにやり場の無い怒りを向けている
「うっうるさい! あたしは人狼じゃない! それに、今は呂模の役職を
「俺の話を
「へっ? 呂模あんた、本当は騎士のロールじゃないの?」
羊子の発言に参加者もギャラリーも皆が、
「羊子お前……、その発言はそのまんま『俺を人狼の次の襲撃対象にしたいんだけど?』の意で間違いないぞ?」
「別にそんな意味は無いわよ? 呂模なら私のリアルナイト様だから、騎士に成ったら当然私を
「いやー……、邪推もしちゃうのだよ羊子ちゃん。何故なら騎士のロールは……」
「他の村人を守れる護衛能力が占い師と並んで、人狼サイドにとって
「そそ。それに仮にだよー? 仮に呂模君が本当に騎士のロールだと発覚しよう物なら……」
「騎士は自分自身を護衛出来ない。詰まりはもしも次の村人投票処刑で、人狼を
ー騎士が夜に人狼に噛まれるのは、確実。
「別に何も問題ないじゃない?」羊子はなおも食い下がらない。
「人狼は犬美で確定何だからさ。こいつを皆で吊ればこのゲームは終わりよ」
「だから、その意見の論拠がお前には無いって話をしてるんだぞ?」呂模は
「犬美ちゃんのカミングアウトを訊いた方が早くないかい? 呂模君」
「そうだな稲荷。朱美さんの
「んっ? ああ。残り六分って所かな」GMが教室の
皆の視線が再び私に
「私のロールは……『ハンター』。この国で言う所の
「ほう……」
「えっ……何それ? そんな役職カード有った?」
呂模や一部のギャラリー達が感嘆する中、頭の弱い羊子だけは
「GMがこのゲームを開始するに当たって使用すると公言した、『人狼読本』の基本役職九種類の中には含まれているはずです。内容は、私が何らかの方法で殺害された場合に、他プレイヤーを
基本的にこの猫又に依る
「もぐもぐ……何かな帰国子女さん?」GMは自分の席で、食べかけの
「私がもしも昼間の村人投票処刑で吊られたその時は、報復対象として羊子さんを指定殺害させて下さい」
「はっ、ハアアァァァ!?」
「如何でしょうか? GM様」
「ふむ……ルールの
GMは紙パックの
「ルールは全力で守る物。この大原則に従うならば、いくら帰国子女さんが
ただ……。と羊子が安堵しかけた途端、GMは尚もこう続けた。
「羊子は羊子で、朱美さんを投票処刑で殺したくて、仕方が無いんだろ?
だったら、朱美さんが仮に猫又だった時に、処刑の
依って……ゲームを心から楽しみたい俺としては、
「ちょっ!? ウチヤマダーーー!?」
「俺の力に
「おっ、覚えてなさいよ……!」
「今現在判明している情報を整理しましょう。人狼、占い師、騎士のロールは最初の五名のプレイヤーの内三名にはそれぞれ一枚ずつ、確定で配られていて、残り二名のロールはランダムです。因みにフリーメイソンは配られていません」
「そして占い師役と思われる牛尾は既に、あの世逝きだ。
牛尾は汚い男で
「そうなると残り四人の内二人は人狼と騎士さんで、騎士さんは一回村人の護衛に失敗してる訳だよね?
残り二人のロールが何かで変わって来るよねえ~。まあ、犬美ちゃんは猫又、呂模君は村人、更にここでカミングアウトさせて頂いちゃうと、稲荷は
「少なくとも一人以上は騙っていますね。ゲームの
「ふむ……」
「うーん……」
「でもでも、羊子ちゃんは呂模君の事を少なくとも騎士だと見ている訳でござるよね?」
「そうよっ? それが何? 稲荷」
「そうなると呂模君のロールが何なのかが気になって……。少なくとも
「うるさいなあ! 悪かったわねっ常識が無くて!」
「本当ですね」
「犬美は黙れーっ! この人狼!!」
「羊子さんは呂模さんをわざと騎士と指定して、次の夜に人狼の襲撃から呂模さんを守ろうとしている、本当の騎士の可能性も有りますね」
「単なる狂人の間違い何じゃないのか? リアル狂人」
「呂模までそんな事言うのー!?」リアル恋人の冷たい台詞に、羊子は
「いえ、狂人ならば逆にこの人数ですから、人狼に
「確かにその
「羊子ちゃんは最初に呂模君にフリーメイソン騙りを持ち掛けるのに失敗してますからな~」
「あんた達うるさいわよ! それにパワープレイとか意味分かんない事言わないでよ!? 日本語を話しなさいよ!!」明らかに、羊子は狂人のパワープレイをこなせるだけの知能が足りない様にしか見えない。
「となると……犬美ちゃんが言った通りに、羊子ちゃんが騎士のロールか、少なくとも村人陣営なのは間違いない感じでござるよね?」
「そう。そして、今回のゲームでは私の
私の言葉に、ギャラリーがどよめくのが聞こえてくる。
「ほう……? 何故そう言い切れるんだ? 朱美さん」
「犬美が
「違います羊子さん。このゲーム、人狼サイドである狂人が配られていたとしたら、『既に第三陣営が一人勝ちしている』からです」
「げえっ!?」
「マジかよ……?」
「嘘でしょ……!?」
ギャラリーが騒然としている。GMも私達の会話中に食事を済ませて、自分の席から立ち上がりこちらに向かって来ていた。そろそろ昼も終わる頃か。私は稲荷の方を向いた。
「稲荷さん。貴女はなぜ、牛尾さんが占い師だとカミングアウトして亡くなった時に、
「えっ!? ちょっ、それはだね犬美ちゃん……ただの
「嫌、見間違いじゃないな。俺もあの時稲荷が、胸に手を当ててホッとしてる所を、確かに見たぞ」
「呂模君までそんな……!」稲荷が目に見えて
「役職が解る能力が有る村人陣営が噛まれて、安堵して喜ぶ村人陣営等、そうそう居ません。
これはあくまで私の推察ですが……稲荷さんは本当は人狼か、或いは占い師の占い対象に成ると自動的に死んでしまう役職……"妖狐"の可能性が非常に高いと思います」
「ガビーーーン!!!」私の推察に稲荷は、口をあんぐりと開けて
「稲荷が……妖狐?」
「成る程な。確かに稲荷が妖狐のロールなら、狂人が紛れ込んでただけで村人陣営が一人だけになり、既に村は死んでゲームセットだからな。それも、妖狐の一人勝ちで」
「えっマジ……?」
状況が呑み込めている呂模に対し、羊子は
「占い師が噛まれてしまった村に妖狐が紛れ込んで居る可能性が高い今、人狼の夜の襲撃にも噛まれない妖狐の一人勝ちを防ぐ為には、この後の投票処刑で稲荷さんを吊るしか有りません」
「でもそれじゃあ人狼の犬美が生き残るじゃないのよ!?」羊子は尚も私を人狼だと決め付けて
「稲荷さんが人狼ではないなら、人狼は確かに生き残ります。私とは限りませんがね……。この場合の村人陣営の勝ち筋は……」
「……騎士の護衛能力でワンチャン。それだけか、朱美さん」
「その通りです、呂模さん」
「はーい、タイムアップ。楽しい楽しい夕方の投票処刑の時間がやって参りました」
GMが手を挙げながら再び教室の中央に、
「村の投票処刑のやり方も手慣れたお前らなら知ってるよな?
一人一票だ。人狼か或いは妖狐か……村の中で『こいつはきな臭えな』って
「絶対イヤ!」
「嫌です」
「嫌だな……」
「嫌だねえ~」
「ファッ!?」
生存者全員から拒否反応を示された『臭い男』の
「会話の時間は既に充分に設けた。時間が押してるので投票は一発で決定するぞ? せーの、のドン! で参加者は吊りたい奴を
「解りました、GM様」
「俺もOK」
「う~ん、稲荷ちゃんは嫌~な予感がするよ~?」
「えっ? ちょっと、待ってってばウチヤマダ!」
「せーのっ!」
ードンッ!
呂模と私は迷わず稲荷を、そして稲荷は私を指差し、羊子は私と稲荷を見比べて迷いながらも、仕方無し。と言った感じに遅れて稲荷を指差していた。
「ありゃ~、何でこぉ~成るのっ!」稲荷は苦い笑みを浮かべていた。
「それでは、稲荷さんを処刑します。
アメミット成らぬ"ホモ"ミットに
稲荷が牛尾の顔をちらりと
……気味の悪い眼光を飛ばす牛尾と目が合った。途端に、稲荷が
「……役職を皆に正直に公開するから、その後ちょっとおトイレに、おベンジョンソンして来ちゃっても構わないかい? 内山君」
「いいよ! (行って)こいよ!」GMが
「稲荷のロールはだね……」
稲荷は一時瞼を閉じて、
「……犬美ちゃんの大正解! 妖狐でした! ハムスター人間だよん!!
ではでは皆の衆、
そう言い残して、トイレに元気に
「ゲームは続行だ。二晩目の夜が訪れました。十中八九このゲーム最後の夜だぞ、皆!
プレイヤーは椅子に座り直して目を閉じ頭を垂れて、眠りについて下さい」
GMの呼び掛けに、私は再び瞼の暗闇と、空腹を感じる。内心弁当はとっくに放課後まで諦めた。
「人狼は目を覚まして下さい。今晩の襲撃対象を黙して指定し、再び眠りについて下さい」
生き残りの人狼役が
「騎士は目を覚まして下さい。今晩の護衛先を指定して、眠りについて下さい」
騎士が負けじと
そして……決着の朝。
「夜が明けました。
羊子さんが無惨な姿で発見されました。
村人と人狼が同数に成りました。今回のゲームは、人狼陣営の勝利で終わりました!」
昼休みが丁度終わる校内チャイムのウェストミンスターの
チェックメイトは、
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