決して浮気ではない

「信じてくれ」


 僕は、ただひたすらに繰り返していた。


「これは、決して浮気ではないんだ!」


 彼女はそれまでずっと押し黙っていたが、やっと口を開いた。


「でも、課金したんでしょ?」


 そう言われると、僕には答えようがない。


「課金したんでしょ? 正直に答えてみなさい」


「……課金、しました」


 ほらね、と彼女は呟いた。


「それでも浮気じゃないんだっ!」


「浮気でしょ。他に、なにがあるっていうの?」


 僕は押し黙る。


「し、仕方なかったんだよ。最近、少しずつ追加キャラが猛威を振るっていて、少しはそれに対抗できる戦力を、と」


「それを、浮気と言うんじゃないの? 絶対に手は出さない、って言っていたじゃない」


「そ、それは……」


「信じられない」


 彼女は力任せに立ち上がった。椅子が大きな音を立て、喫茶店中の客がこちらを向いた。


「さよなら、もう二度と会うことはないでしょうね」


傷心した僕はスマホを開く。僕を受け入れてくれる耽美な声がした。

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