ビームの先
僕らの隣の席は子供をそれぞれ連れたお母さん二人がいらっしゃって、子供たちが二人で騒いでいた。
「ビーム!」
突如としてその子供に腕をクロスさせ、僕は面と向かって言われる。僕は面食らい、何も返せなかった。すぐにその子供をお母さんがすみませんと言いながら引き寄せてくれたが、僕には疑問が残った。
「なぁ、ビームの先ってどうなっているんだ?」
「なんて?」
あかりは怪訝そうな顔でスマホから顔を上げた。
「ビームの先。ここで、ビームを出したら、その先端ってどうなってるんだ?」
「そんなもの、私が知るわけないでしょ」
「量子ビームとか勉強してなかったっけ?」
「してるけど、厳密に私の専攻じゃないし。あと、私そんなに全部を理解しているわけじゃないし」
「じゃあ、ビームって先端ではやっぱり弱くなるのか?」
「そうなんじゃない?そもそも、あなたの思い描くビームの概念は知らないけれど、エネルギーを使いながら進んだら、それだけ弱くなるでしょ」
「じゃあ、ビームの先は、弱々しくなって消えていく、っていうことか?」
「そうじゃない?知らないけれど」
「じゃあ、ビームも至近距離で当てる方が威力が強いってことだな」
「そうね。そうだと思うわ」
あかりは曖昧な返事をする。
「ビーム」
さっきの子供を真似て、両手を交差させてあかりに向かって言ってみる。彼女は呆れた様子で、大人になりなさい、とだけ言った。どうやら僕のビームは、あかりまで届かずに潰えてしまうらしい。
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