コップ
コップは軽やかな音を立てて砕け散った。持ち主の性格をあらわしているかのような音に私はおもわず笑ってしまう。
彼曰く、限定のコップで、希少価値が高いらしかった。どこか名の売れた喫茶店で買ってきたんだと、彼が鼻高々に説明していたような気もする。フリマアプリで売りに出してもよかったが、こいつは誰か他人に使われるよりか、割られることを望んでいるようだったから、割ってやった。割ってみて、特に清々しさも爽快感もなかった。要らなくなったものが、ただ使えないゴミとして床に散らばった、というだけだった。これが、こいつの末路だったのだ、と思う。彼は割れたことで幸せだっただろうし、こんな最期が彼にはお似合いだ。
しかし。
私は舌を盛大にこの部屋に響き渡るように鳴らす。まだ、床には血が懸命にその跡を付けようと伸びていて、まだ私に何かを求めているらしい。
動かなくなった彼を片付けるのは、私なのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます