イマドキの恋愛2020

 喫茶店を出たときにはもう辺りは暗くなっていて、その街の色合いが今日という夢見心地の時間の終わりを告げていた。

「もう、帰らなきゃね」

「そうだね」

 彼女は、少しうつむいて、名残惜しいような表情を見せた。その表情が、また愛おしい。壊してはいけないような、触れてはいけないような、そんなものに僕はこの手で触れているという感覚が、僕を背徳的な気持ちにさせる。


「また、今度だね」

「だから、また今度の挨拶、して」

 彼女の顔がぐっと近付いて、細微まで見える彼女の顔の一つ一つが僕の鼓動を高鳴らせる。彼女の目は閉じられていたし、彼女は唇を少しだけとがらせる。

 こういうのは、さすがに男からだろう。僕は意を決して口づけをする。お互いの唇が押しつぶされ、昨晩の友梨香のキスと同じ味がした。

「プラスチックの味だね」

 彼女はそう言って透明なシートの向こうで笑っていた。友梨香が派手に残した口紅はちゃんと洗い落とすことができたらしい。僕は、ほっと胸を撫でおろして彼女に笑いかけてみせる。

「それでも、君の味がしたよ」

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