「命を削る」

 喫茶店で、僕は先ほど買った好きな漫画の最新刊を読んでいた。言わずと知れたバトル漫画。主人公たちは強敵に追い詰められて、なんとかしてその強敵を凌ぐ。


 この技は命を削るが.....


 異能戦闘系のお話にはよくある台詞だ。


 正直なところ、戦闘もののお話は好きで読むのだが、この表現は好きではない。


 何故か。疑問しか浮かばないからだ。


 体力を大幅に使う、身体を酷使する。よくわかる。

 命を削る、寿命を縮める。ちっともわからない。


「命を削る」のは、誰が証明した?

 誰がどうやって気付いた?


 死期が分かるならいざ知らず、対照実験でも行えたならいざ知らず、何を根拠にその台詞を言い切り技を使うのか。


 身体を酷く酷使する?

 それでは命を削られるかもしれないが、具体的に「命を削る」証明にはならない。あくまでも、かもしれない、というだけだ。


 この技を使うと死んでしまう。それなら理解できる。その技を使って、死んでいけば説明がなるし、はっきりとした事実だろう。


 「命を削る」というのは、その技を使う者の自己満足なのではないだろうか。


 甚だ疑問に思う。

 誰か、教えてくれ。

 もしかすると、この答えを知るために僕は命を削らなければならないのかもしれないが。

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