サンタがかぶる紅白の帽子の下に潜む黒髪
駅前のロータリーにて、どこかのカフェの店員がサンタのコスを身にまとい、チラシを配っていた。もうそんな季節らしい。
サンタクロース。
純粋無垢、幸せの象徴的なものだ。
夢を壊すなら、サンタの正体はその子の御両親だ御家族だと言うだけでおしまいおしまい。めでたしめでたし。
そんなことを主張したいわけじゃない。
いい子にしていれば、プレゼントがもらえる。そう信じてまだ無垢な子供はサンタを待つ。
いい子にしていれば。ここにまず疑問をもってしまう。まず、いい子とはなんなのか。答えは簡単だ。親の言うことを聞き、個を出さない子。親が成し得なかった理想を押し付けられてもその通りにこなす、まさしく鳶が鷹を産んだ通りの子。
いい子の基準がよくわからないという話はさすがに卑屈だと言われそうだから、また置いておくとしても、プレゼントを貰えるいい子がどういうものかというとまたこれも難しい。親がお金持ちならばどれだけ息子が馬鹿でも、どれだけ悪い子であろうともサンタさんはやってきてプレゼントを与えてくれる。逆にどれだけ親孝行な子で優しくいい子だとしても親が貧しければサンタさんが与えてくれるプレゼントには限りがあるし、ないかもしれない。
それでも親は我が子にいい子にしていろという。いい子にしていれば、プレゼントがもらえる。子は純粋なまま、白髭のおじいさんが持ってくる宝箱を切に願う。
矛盾にも程がある。
本当にいい子にすべきだったのは、親でありその親でありその先祖であるのかもしれない。
理想を押し付け、至純に願っているサンタは偽物だ。その人がプレゼントを準備していようが関係ない。
僕は駅から電車に乗り、どこにも寄り道することなく家へと帰った。聖夜だなんだと騒ぎ立てる人々が騒ぎ立てる夜、僕は窓の外に広がる星空を見つめて、真のサンタがソリに乗って夜空を駆けるのを待っている。
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