雪が降り積もる

 今年も雪国では、雪が降り積もる。


 寒さに凍えながら、私は喫茶店で温まろうとホットのコーヒーを頼む。


 暖房の効いた暖かい店内とガラス一枚隔てた外では、雪がいつのまにか積もり世界が前の見えないモノトーンへと変わる。


 凍えた手を熱すぎる珈琲で温めながら、私は冬の寒さを他人事のように考える。


 辛い季節が今年も最後に待ち構えていた。


 雪は嫌いだ。ただ、ひたすらに。


 雨にいいイメージはない。狐の嫁入りぐらいなら良くても、ざあざあ降る雨は大抵暗い未来か気持ちのあらわれだ。


 雪は、その雨が凍っただけだ。


 雨が凍ったところで、なぜ恋人達を包むようになるのだろう。降り積もるは純白の天使なんかじゃない。いい体裁を装った邪悪な悪魔だ。


 雪を手に載せて、手の熱で溶かしても、雨へと戻るだけなのに。

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