カフェインの怪物

「珍しいよね」

 沙弥は、ぽつんと呟いた。なにが、と聞き返すと沙弥は僕が追加で注文したカフェモカを指差す。

「そういうの、あんまり飲まないじゃん」

 確かに。たいてい、僕がこういうところで頼むのはブラックだ。そして、家では眠気覚ましに[怪物]を飲む。


「前にさ」

「自販機に[怪物]があればなぁという話をした時に、本当に魑魅魍魎の方の[怪物]をいれると思った知人の勘違いを盛大に笑ったことがある」

「それの、どこが面白いの?」

「いや、面白いと思って生きてきたんだけど。まぁたいした話じゃない」


 しかし、眠気を覚ます飲み物も本当に色々な種類がある。

 翼を授ける飲み物もあるし、缶珈琲自体も色々と種類がある。[ファイト一発]もそれ関連だろう。個人的には、そのなかで味が好きな[怪物]をよく飲むけれど、[怪物]にも色々ある。僕のお気に入りは白い[怪物]で、それがなければ諦めることさえある。


 ただカフェインを摂取したいのなら、そういう類いのエナジードリンクではなく珈琲の方がいいだとか聞くこともある。カフェインの量は普通の珈琲の方が断然多いとかなんとか。実は、なんとかというお茶の方が多いとかナントカカントカ…

 真偽のほどは何も知らない。

 わざわざ成分表示を確認して購入するわけでもないが、それでも多少は気になってしまう。缶の側面に目を向けるとカフェイン量は書いてあるはずだ。生憎、手元に缶はないから僕は手元の携帯で検索してみる。


 40mg/100ml。

 多くても少なくても、その驚きよりかは僕の目を覚ましてくれそうなカフェインの量である。

僕はその事実を確認して、紗弥に訊いてみる。

「エナジードリンク系で、なにが好き?」

「[赤い牛]。あぁでも、最近の、[範囲]は飲みたい」

「[怪物]は?」

「私は好きじゃない」

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