第17話 ミクロの決死圏

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 これはメモっていたわけではありませんが、昔見た夢で頭から離れないものです。


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 高いところから落ちる夢。


 なにかに挟まれて圧迫される夢。


 なにかに追われる夢。


 どこかに閉じ込められる夢。


 誰かに怒られる夢。


 どんどん溶けていく夢。


 いろんな怖い夢はあるけれど、僕が見たことのある夢で一番怖かったのは「体が小さくなる夢」だ。


 畳の目より小さくなった僕がどんなに叫んでも誰も気が付いてくれない。


 たった一畳の畳を横切るのに一日かかるほどの大冒険。


 目に見えなかったダニが怪獣のように彷徨いている世界。


 ダニがどういうビジュアルなのか曖昧だったので、夢の中では巨大なダンゴムシのような姿をしていた。しかも奴らは密集している。


 蓮コラと言われるあの気持ち悪いものが目の前に在るようなイメージで、頭のなかから指先まで全身に鳥肌が立った。


 あの恐怖の根源は、小さくなってダニに襲われることではない。誰からも認識されず、声も届か、孤独にミクロの世界の中で死んでいくことだ。


 あの夢の中で僕は、食うものもなく水もなく、孤独に死んでいった。


 死に間際の孤独感。絶望感。虚無感。

 夢なのに、やけに生々しく感じるあの心境。


 あれを感じたことのある人は「死んだことがある」と言っても過言ではないだろう。


 たぶん、僕は何百回と死んでいる。

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