第10話 まぜて

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 これは僕が実際に体験し、起きてすぐにメモった悪夢です。


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 見ると呪われるビデオを見て何日か過ぎると、テレビの中から女が出てくるアレ。

 入ると呪われる家に居付いた地縛霊がゴミ袋の中から「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」って言いながら、四つん這いで階段から降りてくるアレ。





 僕はそんな感じの「呪いの女」になっていた。





 肝試しに来る若い連中が煩くて仕方ないので追い出す。


 たまに「相手が幽霊だろうと女相手にビビらない」という男もいるので、実力行使で呪い殺したりもした。


 殺していくうちに楽しくなってきた。


 次はどんな感じでビビらせて、恐怖のどん底の最中に殺せるかな、とワクワクしていた。


「人殺しは楽しい?」


 誰かが僕に声をかけてきたが誰が言ったのかわからない。


 幽霊になってもビビらされるのか。誰が今喋ったんだ?


 なにか出てきた。


 女の亡霊。


 自分が仮装パーティーレベルのしょぼい格好の雰囲気幽霊だとしたら、あちらは怨念渦巻くガチな亡霊。


「私もまぜて」


 自分の姿がすごく中途半端で恥ずかしいと思っていた僕は、亡霊に言われて「いいよ」と応じた。


 これでもっと驚かせられるんじゃないかとワクワクした。


「じゃあ、


 亡霊は僕の中に入ってきた。


 一緒に驚かそう、という意味の『混ざろう』じゃなかった。本当に僕に混ざろうとしている。


 助けて!


 体が、意識が、どす黒く染まっていく。


 人間性が失われていく。


 殺したい。いや、殺す。


 人間という人間のすべてを。


 この世界のすべてを。


 生きとし生けるものすべてを。


 殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。


「けど人間好きでしょう?」


 また違う誰かに言われて目が覚めた。


 クゥがいつものように胸の上に座って僕を見ている。


 自分にあんなどす黒い感情があるのかと、目覚めは最悪だった。


 クゥが胸の上に乗っていたから悪い夢を見たんじゃないだろうか。


 殺したいほど恨んでいる相手もいない自分が、どうしてあれほど人を殺したくなったのかわからない。


「まぜて」


 あの声が耳から離れない。

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