第5話 乳を飲む

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 これは僕が実際に体験し、起きてすぐにメモった悪夢です。


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 短い夢。


 荒野を旅する一行の中に僕はいた。


 同行しているのは、荒々しそうな大柄の男。


 目つきが厭らしく歩き方も腰を振るようにしている猫背の女。


 厳格そうな女。


 どこに向かっているのかわからないが、とにかく喉が渇いた。


 誰もがそう思っていたのだろう。


 猫背の女が「飲むかえ?」と尋ねた時、誰も反対しなかった。


 女は着物のような服を脱いだ。


 下着も付けていない裸を惜しげなく見せた女は、背中から生えた六本の小さな腕で、同じく背中にある三つの乳房から紫色の乳を絞り出してコップに注いだ。


 大柄な男が飲み、厳格そうな女もそれを飲む。


 二人ともクケッという変な声を出して倒れた。


 僕はそれを飲まなかったが、異様な風体の女と同行しなければならなかった。


「飲むかえ?」


 いらない。


「飲むかえ?」


 いらない。


 そんなやり取りを続けていくたびに、猫背女の声が低くなっていく。


「ノ ム カ エ」


 機械で歪めて低くしたような、テープが間延びしたような声になっても、僕は頑なに飲むのを拒否した。


 喉が乾いて死にそうだ。


「ォォォォォ」


 猫背女は俺の口の中に手を入れてきた。


 固くて太い体毛に覆われた腕が僕の口に中に入ってきて水分を奪う。


 苦しい。


 死ぬ。



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 ここで箇条書きのメモが途切れ、もっといろんなことがあった夢だったはずですが、詳細は覚えていません。


 しかし起きてからの記憶はあります。


 飼い猫のクゥがその前足を僕の口の中に突っ込んで起こそうとしていました。


 怖い夢の原因はクゥの前足だったんだな、とその時は苦笑したのですが、玄関先に親指の先と同じくらいの蜘蛛の死骸が転がっていたのを見て、口の中に入ろうとしていたのはこの蜘蛛で、クゥが取り除いてくれていたんじゃないだろうかと青くなりました。

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