第4話 空を飛ぶ夢
-------------------------------------
これは僕が実際に体験し、起きてすぐにメモった悪夢です。
-------------------------------------
その二人は学校の廊下で飛んでいた。
どうやって飛んでいるのか見ていると、壁を蹴って平泳ぎするだけで、すい~っと、廊下を滑空し、ゆるやかに落ちていく。
そこだけまるで月の上みたいに、重力が弱くなったようだった。
僕もやってみようと廊下の壁を蹴って跳んでみるが、まったく浮遊しない。
他のクラスメイトはみんな飛べている。女子も飛べるが、スカートの中が見えてしまうから飛ばないと言っている。
飛べない僕は「なぜ飛べないんだろう」としか考えていなかった。
「なぜ飛べるんだろう」とは考えていなかったことに気が付き「あぁ、これは夢だ。夢だから飛べるんだ」と納得した。
もういい年齢なのに、ここは中学時代かな?
クラスメイト達は殆どが中学校の同級生だが、一部はそうじゃない。
仕事仲間や飲み仲間………みんなの若い頃は知らないから老けた男女が制服を着ているおかしさもあった。
夢ならなんでもできるな!
僕は日頃からムカついていた会社の取締役を見つけて近寄った。
政治力だけで伸し上がってきた無能役員は、優雅に廊下を空中浮遊している。
僕はその背中を蹴った。
取締役の体は廊下から流れて階段の方に行った。
「そこは違う」
誰かが言った。
「廊下は飛べる。だけど階段は飛べない」
取締役は階段の上から変な角度で落ち、落ちきった踊り場では首が斜め後ろに向いていた。
ざまあみろ。
これは夢だから問題ない。
みんなも真似を始めた。
嫌いなやつを廊下から階段へ蹴り出す。
浮いている奴らは自分で慣性をコントロールできず蹴られたまま階段の方に流れ、落ちていく。
あっという間に階段は死体の山になった。
「飛んでみて?」
僕が中学時代に好きだった、片思いしていた女の子はニコっと笑った。
あれ。なんで僕に飛ぶように言うんだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます