パーコいっちゃいました

 昼食に職場近くのとあるチェーンの中華食堂に入った。思いのほか混んでいる。

とくに何を食べたいというのもなく、メニューを広げて最初に目に付いた「パーコー麺」を注文することにした。ほんのりカレーの味がするらしい。


 厨房ではところ狭しと店員が動いている。注文も溜まっているようだ。

 「パーコいっちゃっていいっすか?」厨房でそんな会話が聞こえた。

 パーコ……僕が注文したパーコー麺のことか……僕のパーコー麺……僕のパーコ……ああ僕のパー子……。


 僕はパー子……いや、パーコー麺をカウンター席に座って待ち望んでいた。

 ここで、読者諸兄に注意してもらいたいのは、パー子と言っても決してあの甲高い笑い声のおばちゃんを想像してはいけないということ。


 そうこうしているちにパー子もといパーコー麺がやってきた。チェンジはしない。昨日、立ち食い蕎麦屋で「冷たいお蕎麦のつもりだったのに~」と言いながら、店員に暖かい蕎麦から冷たい蕎麦へのチェンジを迫っていたおばちゃんとは違う。


 ……とにかく、パーコー麺を頂こう。スープが冷めないうちに。過去は変えることが出来ないのだ。あのおばちゃんも冷たい蕎麦は食べられなかった。しかしなんでこんな冬の寒い時期に冷たい蕎麦が食べたかったんだ……ってそんなことはどうでもいい。パー子がキラキラと油を光らせ待っている……。


 パー子はほんのりカレーの味がした。麺はほぐれておらず塊で口の中に入ってくる。それを一口づつにほぐしながら、ゆっくりと食す。

 麺の上には、衣を纏った肉がすうぷに濡れていた。濡れた襦袢がぺったりと纏わりつき透けるように肉が見えている。少しはだけた所からは露わとなって見える肉。それをがっしと掴みとる。肉厚だが固く締っていて、持つと完全に衣は剥がれた。私はそれをしっかと噛み締めた……。


 次に来た時は他の麺を指名もとい注文しよう。

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