アイル・ビー・バック

 朝、仕事に行くときにはコンビニに寄って朝ごはんを買ってくことが多い。だいたいパンとコーヒーを買ってく。

 その日はコンビニ入口に近づいたところで、歩道にスクーターが乗り上げてきた。


 駐車場のないコンビニで、入口付近にスクーターを停めて中年オヤジが降りてきた。チっ! なんだこのやろ~邪魔くせぇなぁ。朝はいつもギリギリだからそういうちょっとした事でイラっとすんのよね。こっちはギリギリでいつも生きてるんだからぁ! もうっ! と思いつつ店内入る。

 

 いつものようにパンとコーヒーを買った。カウンターへ向かう。

 先に一人会計していた。いつもだいたい並ぶことなく買えるけど、たまに一人分くらいは並ぶことがある。チっ! 僕ちゃん急いでるんだからだからぁ! もうっ! 早くしてよね! と、余裕がないせいでワガママボーイな人格が表に出てくる。

 

 陳列棚の間の3本あるうちの一番左側のアイルに立って待つ。

 ふっと右隣のアイルを見ると、さっきのスクーターオヤジが立って待っている。

 

 ハッ! と声が出た。

 カウンターでは先にいた人の会計が終わる。

 オヤジを見る。

 オヤジもこっちを見る。 

 オヤジが笑顔で「どうぞ」と譲ってくれる。


 なんて素敵なオジサマ! ラブどっきゅん! オジサマありがとう!

という気持ちで「すんません、あざぁ~す」とボソッと言いつつペコっと頭を下げて会計に向かう。

 

 会計が済んでもう一度、オジサマの方を向いて「あすぅ~」みたいにボソッと言いつつペコっと頭を下げて、猫背気味にススッと早足で店内を出た。

 

 素感なオジサマとの出会いへの感謝の気持ちで、イライラした気持ちはすでに消え失せていた。気を付けてお出かけらしてね、オジサマ。乙女モードで職場へ向かった。

 


 朝利用するコンビニは二箇所あって、気分によって使い分けている。

 もう一方のコンビニでも、同じように3本のアイルがあって、そこでは並ぶ列は真ん中だった。床にちゃんと矢印とか表示はあるけど、余裕が無さ過ぎて気づかず並んでしまったのだ。


 通勤・通学には余裕を持ってお出かけください。ご安全に!

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