ごめんねヒロシ

 家路へと続く一本道は閑静な住宅街。


 辺りが夕闇に包まれる頃、仕事を終えた僕は家へと歩いていた。


 後方から、心地の良い口笛のメロディが近づいてくる。自転車に乗った若者が上手に口笛を吹いて通り過ぎて行った。


 しばらくして、前方から「フシュ~、フシュ~」と、どっかの隙間から空気が漏れるような音が近づいてきた。


 その音は、ちびまるこちゃんのお父さんに似た服装をしたサンダル履きのおじさんから漏れ出ていた。近所を散歩でもしているのだろうか。


 近づいてくるヒロシ(おじさん)と目が合った。と、急に「ちゃらちゃ~♪」という奇妙なメロディーを口ずさむヒロシ。


 一節だけ口ずさんで「へへっ・・・」と恥ずかしそうに笑って顔伏せた。


 すれ違ったヒロシ(おじさん)の背中に、僕は「ごめん・・・」とつぶやいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る