ロングは短くない

「リャークのジューニのリョングゥ!」


 コンビニでレジを待っている時だった。

 前にいたおじさんは何か呪文のような文言を唱えた。


 そのおじさんと売り場ですれ違った時、滑舌の悪い受け口のあの芸人に似てるなぁ……名前なんだったけなぁ……と思っていたが思い出せなかった……後で調べたら芸人はユーチューバーになっていた。

 もろみ~(おじさん)は背は高くなく典型的なメタボ体型という感じだった。レジのおばちゃんと世間話をしていた。近所に住んでいる常連らしい。

 後方で並んでいた煙草を吸わない僕は一瞬、もろみ~(おじさん)が突然何を言い出したのかと思ったけど、すぐに"ラークの12のロング"と変換できた。



「はいよ!」と元気よくレジの後ろにある棚に商品を探しに行くおばちゃん。


「ラークの、ジューニの、ロングっとぉ……」

 おばちゃんはハッキリと復唱しながら、棚を指差して該当する煙草を探す。


 おばちゃんの手が止まる。


「短いやつでしたっけ~!?」

 振り向いて朗らかな調子でもろみ~(おじさん)に聞いた。


「リョングはみじきゃくないの~!」

 もろみ~(おじさん)は子供を諭すような声でおばちゃんに言った。


「そっか~、アハハ!」

 おばちゃんは反省しない子供のように笑って煙草を取ってレジに戻ってきた。



 そうか、ロングは短くない……勉強になった。


 おばちゃんもしっかり覚えただろうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る