ACT102 デビュー曲!?
今度一緒にCDを出す四人が集まって数分後。
ドアがノックされる。
部屋の中にいた全員が、一斉にドアの方を見る。
開いたドアから入ってきたのは、これまた中間管理職風のおじさんだった。
量産型の中間管理職かっ!? などと頭の中で適当に遊んでいると、
「私は今回楽曲の方で携わっております。倉田と申します」
きれいな角度のお辞儀。
それにつられて私たちもペコリと頭を下げる。
高野さんたちマネージャーは素早く名刺を取り出し、私たち(タレント)が頭を上げる頃には名刺を交換し終わっていた。
まさに早業である。
高野さんたちも凄いが、一人でマネージャー二人の名刺を受け取り、それぞれに名刺を差し出した量産型の中間管理職(倉田さん)も凄い。
熟練のマジシャンのような手際の良さを見せる。
すでに名刺入れを仕舞っている。
一枚のCDを見せながら、倉田さんが言う。
「曲、聴きますよね?」
同時に四人は頷いた。
…………
……
…
「どうですか。人気作曲家、音野先生に頼んで作っていただきました。
音野先生の手がけた曲はミリオン連発! 売れっ子作曲家ですからね!! 結構なお金使いましたけど、これで売れる事間違いなしですね」
アハハと高笑いする中間管理職。
確かにポップな印象の良い曲だと思う。
音楽の事は分からないが、きっとスーパーやなんかで繰り返し流されているのを聞いているうちに、自然と口ずさむ程度にはノリがいい。
「良い曲だと思います」
「そうね。悪くないんじゃないかしら。音の先生作曲だし」
真希のブランド志向は、音楽においても発揮されるらしい。
しかし、女優二人とは対照的にプロの二人の表情は冴えない。
「悪くはない。悪くはないんだけど……何かが足りない感じ」
「二番煎じ感が否めないのよね。KポップとJポップのいいとこ取りしてみました! みたいな感じ。売れる要素詰め込めばいいってもんじゃ無いでしょ?
それこそ、三月四月になると急にとってつけたように増える「サクラ散る」とか「サクラ咲く」みたいなサクラソングとか。そんなの一発屋まっしぐらじゃん」
この二人のアイドルは本当に腹黒い。
だが、二面性があるからこそ、芸能界にいられるのだろう。
この世界は本当にドロドロした世界だから。
繊細な人間はやっていけない(持論)。図太くないとね。
そして、そんな図太い神経した二人のアイドルは、一言。
「「却下(で)!!」」
幸先悪すぎない?
それに、これ、人気作曲家の音野先生も何気に敵に回してない?
だって、曲が気に入らないってことイコール先生への文句だよね?
別にいいじゃん、一発屋でも。
正直、歌手活動とか興味ないから、私的には一発屋でも一向に構わないのだけれど。
MIKAとHIKARUにとっては死活問題なんだろうな。
私と真希も、王子監督の映画に出演した時のイメージが消えずに困っている(これも死活問題だ)。
詳しくは訊かないでほしい(第二幕を参照)……って、私、誰に対して言ってるんだろ……
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