ACT103 作曲家決定!?

 人気作曲家の提供した楽曲を却下したMIKAとHIKARU。

 しかし、ただ気に食わないと言う理由で却下したわけではないらしく、もっといい曲を作る作曲家がいるとのこと。


 MIKAは手早くスマホを操作。

 論より証拠とでも言いたげな顔で、スマホをテーブールの中央に置く。

 私たちは小さな液晶画面を覗き込む。


(……ユーチューブ?)


 大手配信動画サイトが映っていた。

 まさかとは思うけど……


「この人の曲が最高だと思う」


 やっぱり!?

 さすがにデビュー曲の作曲がユーチューバーというのはどうだろうか?

 肯定しかねる。

 それに動画の再生回数を見てみると、1000回を少し超えただけ……ダメじゃん!?


「これだから素人は」


 MIKAは苛立った声で呟く。


(やべっ!? 声、出てた?)


「出てなくても分かるから」


 最早エスパー。

 完全に思考を読まれている。


「まあ、あれだけ露骨に顔に出されたら、ね?」


 HIKARUがフォロー(?)を入れてくれる。


 それにしてもそんなに顔に出てたかな?

 真希ならともかく、私はそこまで……

 真希の方へと目をやると。


 無表情。

 何この完璧なポーカーフェイス!?

 やはり真希も女優と言う事なのか?

 以前共演した映画で真希の真の実力はこの身を以て体感した。

 さすがと言うべきなのか。


「再生回数1000回とかダメダメじゃない」


 そんなことはなかった。

 表情に出なくても、真希は声に出しちゃう娘だった。


 これにはあからさまに嫌な顔を見せるMIKA。


 ダメでしょと、真希の膝辺りを叩くと、


「何すんのよ! 痛いじゃない!」


 何故すぐに声に出す?

 脊髄反射か、脊髄反射なのか?

 最近知った(理解した)言葉なので多用してみたりしながら心の中で真希を罵った(?)。


 これ以上MIKAを刺激するのは避けたかったので、「それでどんな曲なの?」と再生するように急かす。


 するとMIKAは眉を顰めたまま画面をタップした。

 動画が再生されるや否や、皆黙り込み、スマホから流れてくるその楽曲に耳を傾けた。

 三分ちょっとの動画だ。

 動画が終わる頃には、誰しもがその楽曲の虜になっていた。


「やっぱり最高」


 MIKAの呟きに今度は同意した――せざるを得なかった。

 きっとこの彼(?)は天才なのだろうと思った。

 音楽に関しては素人の私でもわかる。これは良い曲だ。

 そう感じたのは私だけでなく、真希も「まあ、いいんじゃない」とぶっきら棒に言う。

 真希の「まあ、いいんじゃない」は最大の賛辞に等しい。


「この人に作曲頼むことに異論ある人は?」


 高圧的態度でMIKAが言う。

 その隣でHIKARUが、誰も異議を唱えなのを見て、「それじゃ、この作曲の件は決定ということで」と手を叩く。


 誰も異論はない。

 しかし、どうやってこの投稿者を突き止めるのか。

 目下の課題はそこにあるように思えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る