第2話 幼馴染み1

【 私たちの星は、人の出入りが、激しい。


その大半は、観光客で満たされているけれど。


『来ただけで、願いが果たされる夢の星』


それが、私のすむ星。


皆は羨ましがるけど、どこがいいのかわからない。


この星が、願いを叶えてくれたことなんて、一度もないのに。


人々は、私たちの星をこう呼ぶ。


願いの星、と 】




────


「何読んでいるんだ?」


ふと、後輩が読んでいる本が気になって、後から覗き込む。と、後輩が、ビクリと見事に驚き、椅子から転げ落ちた。


「何やってるんだ?」


「せ、せ、先輩……驚かさないでくださいぃ」


「む、そんなに、驚くことか?」


「驚きますよぉ。これでも僕、メンタル弱いんですから」


「あぁ、知ってる。で、何読んでたんだ?」


「えぇ、そこはフォローとか、してくれてもいいんじゃないですか……?──えーと、これはですね。最近書籍化も決まった、電子小説です。タイトルは──」


「『百日戦争と願いの星』」


「そうです。そうです。なーんだ、知ってるんじゃないですか……て、僕のスマホ!」


「面白いのか?これ」


「僕のスマホ………えーと、そうですね。人によると思いますが、僕個人としては好きですよ。これ、既に4回目ですし。なんと言うか、読めば読むほど味が出る作品と言いますか」


「ふーん」


神無は、すっとスマホを後輩に返し、「休憩も終わりだし、帰るぞ」と投げ掛けた。


「へ?あ!待ってくださいよ……!」


そんな、後輩の声をバックに、(頑張っているんだな。咲)と、幼馴染のことを思い返した。

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