第12話「転移」

【この子が例のレポートにあった女性か?】


 研究者は奏多にフランス語でこう問いかける。


【すまない、こいつはフランス語分からないから英語で頼めるか?】


 遥は二人が何いってるのかさっぱり分からなかった。


『済まない、いつもの癖だ。ところで『こいつ』といわなかったか?』


 そんな研究者に遥は英語で返す。


『僕は転移する時、性別が変わったんだ』


『そんな非科学的な……といいたいがな。空間転移なんて前例は無いし、何かトラブルでもあったんだろ?』


『そうだね、事故があった。充電が終わり次第帰還したい』


 そんな遥に奏多は驚く。


「マジか。事故ったばっかだろ?」


 遥は研究者にもわかるよう英語で話を続けた。


『元居た世界から僕達の世界の無人機が来ていた。だからその情報を得たい』


『それは構わないが、何故いくら君の世界での事が発端とはいえ我々に強力を?』


『困った時はお互い様です。実はこちらも困っていることがあるんです』


 そんな遥に研究者は問う。


『何だ?やって欲しいことならいうだけいってみろ』


『まずは僕が女性として生活していく上での支援……性転換手術はあるのかもしれませんが戻りづらいので』


『そういやそのロボットは二人乗りで、前の操縦者が事故で死んだのだったな』


 納得するようにいう研究者に、遥はこう続ける。


『そして我々の世界には宇宙開発の技術が欠如している……なのでそれを提供して貰いたい』


『それは協力の見返りとしては大きすぎる』


 遥はそれを見こしていたかのようにいう。


『でしたら、異世界転移装置の技術を……』


『それはあまりに危険すぎる。技術をこちらに渡し、そちらの目的が済み次第研究を凍結して貰いたい』


『それが宇宙開発の技術提供の見返りであるなら、速やかに約束を取り付けます』


 そんな遥に研究者は問う。


『お前は責任者ではないのか?』


『交渉は一任されていましたが、異世界転移装置の研究凍結とまでなると流石に越権行為です』


『まあいいお前が前向きに検討しているなら、我々もその意志は認めよう』

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